ヘスの援軍?
エーザスが行軍と逆行し、帰路につく頃、行軍は再び動き出そうとしていた。
ここで、伝令等、動きがある。
まず、ドルディッヒ王の元に、アールッシュ近衛兵長、重装歩兵、騎馬隊、弓矢隊、輜重隊などの全指揮官が集められる。
この時点でただ事ではない。
前後の全指揮官を集めたのである。
「これよりアインハイツ将軍より重要な伝令を!」
そういうと、伝令係でなく、エルドス近衛兵長自らが来たことに重要性を察知する。
「このことは申し訳ないが、ヴィータ国の弓矢隊にもお伝え頂きたい」
エルドス近衛兵長がそういうと一同は頷く。
「兵に混乱が伝わらぬようにお願い致します。結論から言うと、カンナグァ連邦の別働隊が最後尾のウィッセン国重装歩兵部隊を強襲しております。敵国の鎧にクジャクの紋章を確認しており、ヘス国のものと想定されます。兵数はおよそ千五百。たまたま行軍の遅れていたアインハイツ将軍が軍を反転させて援軍として向かいました」
そこまでいうと、ドルディッヒ王含め、全指揮官に動揺が走る。
つい先ほど、先導していたエルザーが夜襲を受けたのを聞いた直後である。
おそらくはタイミングを合わせて、指揮系統の混乱や再編成のタイミングなども狙ったのだと推測した。
他の指揮官が現状を問いただそうとするが、エルドスが手で遮る。
「ですが、ウィッセン国のアドランデ将軍はこのことを読んでらしたようです。思えばこれまで最も行軍が遅かったのも名将としては不自然でした。さすがは歴戦の将軍と言わざるを得ません。完全に読み切っておりました。逆に迎撃態勢の整っていたアドランデ将軍の抵抗に遭い、カンナグァ連邦は徐々に押され気味になっています。そこに殲滅のためにアインハイツ将軍が動きました。こちらは時間の問題でしょう。クジャクだけでなく、タカの紋章も混じっていることを考えると、フラハーの別働隊も加わっていると。つまり、これはチャンスです。今平野に向かえば最も手薄なフラハーと対峙できます。アインハイツ将軍は「自分とウィッセンは後から追う。このチャンスを逃すな」とのことです」
そこまで言い切ると、走ってきて息切れをしていた呼吸を一度落ちつかせる。
敵襲の知らせに一時はざわめきが生じたが、反転、笑みを浮かべた好戦ムードへ一気に傾く。
「おおっ。さすがはアドランデ将軍。なんという戦略眼」
「まさか、進んできた森の背後、側面から敵が襲ってくるのを予測するとは・・・・・・」
「これは、千載一遇のチャンスですぞ」
皆口々に称賛し、士気は上がる。
「私はこれからアインハイツ将軍に直に報告にまいる。ヴィータ国の方にお伝えする時間がありませんゆえ、お願い申し上げる。最後にアールッシュ近衛兵長、我が近衛兵団の指揮をお願いしたいのだが、良いだろうか?」
そういって、エルドス近衛兵長はアールッシュ近衛兵長を手招きする。
「私はアインハイツ将軍の下に一度伝令で走る。その間私の近衛兵団を指揮し、一緒に戦場へ向かってくれ。私の到着が遅れた場合も含め、戦場の指揮は任せる」
そう言って、肩を叩き、小声でアールッシュにだけ聞こえるように耳打ちする。
「アインハイツ将軍の動きが怪しい。迎撃に向かった部隊をわけて、一部を森に潜ませている。戦場の平野に着いたら、むしろ王は前寄りに配置させろ。撤退が一番危険だ。後ろを狙われる可能性が高い。私が戻るまでは絶対に後ろに退くな。いいな! 我々が王を守るんだ。任せたぞ、アールッシュ。お前だけが頼りだ」
アールッシュは目を見開き、エルドス近衛兵長を見る。
「では、くれぐれも私のかわいい近衛兵を頼むぞ。アールッシュ近衛兵長!」
周囲に聞こえるくらい大きい声で張り上げたかと思うと、
「では、御免」
と一礼してアインハイツ将軍の下へ走って行く。




