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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
9/205

合流

 少女達は尋問の場所となった平地よりも森の奥へと進んでいく。


道すがら、琴葉は尋ねる。


「ねぇねぇ、最後の質問なんだけど、何で平野や水源の場所について聞いたの?」


朝美とのぞみや顔を見合わせ、どちらが答えるか思案した様子だが、意を決したのか、のぞみが答える。


「うんとね。平野があれば、そこに大規模な兵でキャンプすることができるし、占領後は中継基地を設置することができるから戦略的に大切なんだよ。それに、大規模な戦闘が可能で、見通しも良いし、ゲリラ戦にはならないからオージュス連合国にとっては重要なの」


どや顔ではなく、控えめに答えるあたり、少女の謙虚さと琴葉への配慮が伺える。


「水源も、単純に兵の飲み水を確保するだけじゃなく、水魔法の源泉にもなるし、剣士なんかにとっては、研ぐために水が必至だからな。まぁ、これはこっちにとっても同じだから、必然的に奪い合う拠点にもなるってもんだ」


朝美はもう一方の質問に答える。


「あ! モモンガだぁ。ねぇねぇ、朝美ちゃん! モモンガだよ。モモンガ! 今あそこにいたの!」


そういうと、せっかく二人が解説してくれたにもかかわらず、はしゃぐのであった。


「おまえなぁ。人の話聞いてたのかよ・・・・・・」


半ば呆れながら、いつものこととため息をつき、朝美はのぞみの方を見ると、半笑いを浮かべる。


当の琴葉は、「あれ? どうしたの?」と言っているあたり、マイペースである。


念のため、理解したかどうかを確認するも、本当に理解したのかどうかは不明だが、うんうんと頷いている。




 他愛ない話をしつつ、三人の少女は先ほどよりはやや狭いが、やはり開けた地へと足を踏み入れる。


雲に隠れていた二つの月のうち、紅月のみが顔を出し、赤いスポットライトが大地を照らす。


一時的な活動拠点としていたのか、休憩地なのか。


大きな台車型の荷物とともに、火こそついていないものの、焚き火の用意とテントがあり、水の入った樽が見受けられる。





 隠れるでもなく、逃げるでもなく、どちらかというと拠点防衛をになっているのであろう。


熊と見まがうほどの巨躯の男が浮かび上がる。


数分前に少女達を感知していたのか、すでに警戒、臨戦態勢にあり、大きな斧を肩に担いでいる。


男の影に隠れるようにして老齢の男性がたたずむが、年相応の落ち着きを持っており、巨躯の男ほどの緊張感、警戒心は抱いていないようだ。


やや背中を丸め、後ろに手を組んでいることからも戦闘の意思は低いのが感じ取れる。





「あ、テラガルドさん、アスじーちゃん、ただいま~」


琴葉はにこやかに手を振って小走りで男達に駆け寄る。


巨躯の男は、厳つい身体に似合わず、微笑みを浮かべ、警戒心を解く。


そして、担いでいた斧を地面に突き刺し、琴葉に一歩歩み寄る。


「おかえりなさい。琴葉さん。ご無事で何よりです」


見た目の厳つさとは対照的に、紳士的かつ謙虚な対応で少女を迎え入れる。


放っておくと、跪いて頭を垂れるような雰囲気さえある。





男の影にいた老人に気付くと、琴葉はそちらにも話しかける。


「アスじーちゃん、お待たせっ。魔獣に襲われたりしなかった?」


「ほっほっほ。大丈夫じゃよ。まぁ、一体襲ってきたが、テラガルドが追っ払ってくれたわい」


そういうと、テラガルドの腰あたりをバンバンと叩き、感謝の意を示す。


先ほどの警戒心は魔獣を意識してのことだったのかも知れない。





「やっぱ護衛であたし達の誰かが残れば良かったかなぁ・・・・・・。まぁ、無事で何よりだけどな」


そう言うと朝美は頭をポリポリと搔きながら男たちのもとに歩み寄る。


「いえ。この奥地までは敵兵も来ないでしょうから、警戒すべきは魔獣だけ。出てくる魔獣もある程度予測できますから、作戦は間違っておりませんよ」


テラガルドはそう言って、微笑みながら少女達の作戦を擁護する。





「で、その笑顔を見る限りは、哨戒業務は無事に達成できたということじゃろう?」


アス老人が本題に戻すと、五人は輪になり、先ほどの件を報告し、今後の行動を話しあう。

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