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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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夜のミーティング

 その一部始終を見ていたフラハー王とシークンドは二人で密かに微笑んでいる。


元より、シークンドは敵対心を持っていたわけではないが、琴葉隊の戦闘力は高く、コミュニケーション能力、そして、何よりも人として信頼できそうだということに安心したのだった。


「しかし、何でもやる姿勢は本当に大事ですな」


シークンドはフラハー王に言い、フラハー王もまた真顔で頷く。


「シークンド。あの二人、まだ本気の半分も出していないぞ。アレが全てと思うなよ」


そういって、ニヤッと笑い、シークンドが


「魔法使いですか・・・・・・」


と呟き、返す。


「まぁ、おそらくはそうであろうが、それ以上に適材適所で強くなる。しかもチームだと相乗効果もおそらくは高い」


「なるほど。琴葉隊で一つの部隊でしたな」


フラハー王は頷き、終始笑みを絶やさない。


「こんなことであれば、前回の侵略の時も参加したかったですな。さぞや楽しかったでしょう」


「ああ、にぎやかだ。不謹慎だが、戦争が楽しくてしょうがない」


そういって王は笑う。


「エムエールの士官学校へは、私も行ってましたので、一部の生徒のレベルの高さは知っております」


そう言うと、フラハー王も思い出したように、答える。


「そうか。お前も卒業生だったな。在学期間はかぶってないと思うが」


「はい。フラハー王が卒業して、二年後に私が入学し、私が卒業したのが六年前ですからね。彼女らが入ってきたのは入れ違いくらいでしょう」


シークンドは無表情にそう言うと、多少は懐かしいのか、少しばかり目を閉じて物思いにふける。


「そうか。もうそんな経つか」


フラハー王も、エムエールの士官学校を出たのだが、思い出すように、上空を浮かべている。


「私が在学中も、創設以来の天才と呼ばれるものがおりましたゆえ、琴葉隊も特派である以上、似たような実力だと推察しておりました」


王は、そうか、とだけ言うとまだ学生時代を懐かしんでいるのか、上を見上げたままだ。


シークンドは一礼して下がり、訓練へと戻っていくのであった。





 その夜、本来は会議をする予定だったが、日中の訓練での疲労回復にあてるため、翌日に延期となっていた。


その代わり、足をアイシングしている朝美とのぞみ、テラガルド、アス老人が集まって今後の作戦について協議していた。


琴葉は、夕方に目を覚まし、食事を取ろうとしたのだが、朝美の膝蹴りが効いたのか、腹筋が痛くて食べることができず、


「この恨み晴らさでおくべきか・・・・・・」


と言いながら、お腹を押さえ、薙刀を杖代わりにテントを出て行ったきりである。


とりあえず、琴葉抜きでミーティングが行なわれることになり、議題は戦略へと移る。


「王が出てきたら、原則としては王狙いになると思います。それは相手も一般的には同じなのですが」


そういって、のぞみは切り出す。


「まぁ、普通はそうじゃろな。ただ、こちらはそうじゃが、相手の目的次第では向こうさんはそうとも限らん」


一同は頷く。


「まぁ、向こうはそもそも、王さんの見栄で始めたわけだからなぁ。侵攻そのものが目的なのか、土地の制圧か、それもどこまでか、考えたらキリがねぇし、わかんねぇよ」


朝美は青あざになったスネを冷やしながら意見する。


「そうだよね。だから、こっちのことだけ考えれば良いと思う」


のぞみも、痛々しいスネを見ながら同意する。


「嬢ちゃんが言いたいのは、ようは相手の王を殺しに行くか、殺しに行かないかということじゃろ?」


アス老人が問う。


「そうです。王を倒せば、その場の戦争は終わると思うんです。防衛戦ではないですから。ただ、そうした場合、次はプルミエ国単体ではなく、オージュス連合が報復とばかりに全面戦争をしかけてくるのではないかと。さすがに一国の王を取られて黙っているのは連合国としてのメンツもあると思うのです」


皆、可能性を十分に感じながら、黙りこくる。


「考え方によっちゃあ、王を殺せば、おとなしくなる可能性もあるんじゃねえの?」


朝美は、のぞみの言うことの尤もさを理解しつつ、あえて逆に問う。


のぞみは答えに窮するが、代わりに、テラガルドが口を開く。


「結果としては、どっちに転ぶかわかりませんが、のぞみさんが心配しているようなことが起こる可能性を考えて王を取る必要がある。つまり、覚悟の問題ということでしょうか」


再び一同が黙る。


「うむ。そういうことになるかのぉ。いざ戦争が始まると、こちら側が選べるかどうかはわからんが、覚悟をもって、戦略は決めておいた方が良いじゃろなぁ」


アス老人も、何となく煮え切らないような曖昧な返事をする。


「で、オッズを操って、大金をせしめた策士としては、どうすんのが良いと思ってんだ?」


朝美が昼間のことを根に持って、アス老人に問いかける。


のぞみは自分で判断がまだできていないのであろう、アス老人の回答を真剣に待つ。


「意外とせこいのぅ。赤い髪の嬢ちゃんは」


と笑って、少し目を閉じたかと思うと、口を開く。


「わしは、魔法の使用も含め、全て隠すことなく、全力で迎撃するのが良いと思っとる。結果として王の生死はどっちでもよいわ」


のぞみは、予想外だったのか、真意を問う。


「これ以上の大軍になるのであれば、いずれにせよ、フラハーだけでは防衛し切れん。ある程度のところで避難し、フェルゼン、ボクスネー峠での防衛がベストじゃ。・・・・・・ヘスは論外としてな。であれば、唯一会戦が行えるフラハーで兵数をできる限り減らす方が連邦全体としては良いと思うのじゃ」


そこまでいって、全員の顔を一度見渡す。


「初戦と違って、もう次はそれなりの兵数がくるじゃろ。こちらもなりふり構っておられん。消耗戦も避けられんじゃろ。それに、さっき、せこい嬢ちゃんが言って多様に、王を殺してもどっちに転ぶかはわからん。覚悟は必要じゃが」


そこまでいうと、朝美を見てにやりとし、テラガルドにも眼をやる。


「うっせえなぁ、じじい。あたしはせこくねえよ」


とアイシングしていた氷嚢を老人に投げつけるが、苦笑いでテラガルドが受け止める。


「魔法も解禁ですか?」


のぞみはアス老人に追加で聞く。


「魔法の使用は国家の秘密でもあるが、最終的に個人の秘密じゃ。魔法が使えるとなったら、敵国に狙われることも多くなるじゃろう。暗殺含めてな。家族が狙われることもある。敵だけじゃないぞ。身内からも妬みや僻み、偏見の目にさらされることもある。最終的には個人の判断に任せるのが良いと思う。ただ、使いようによっては、戦局をひっくり返すことだってできるとわしは思っておる」


そう言って、真顔で沈黙するのだった。


朝美ものぞみも、そして今は席を外している琴葉も魔法を使える。


たまたま幼少期より仲良くしている三人組が奇跡的に全員魔法使いだったのだが、周囲からは差別や偏見の目にさらされることもあったのは経験済みだ。


もとより気にする朝美と琴葉ではないが、のぞみは良く悩んだものだった。


朝美と琴葉がいなければ、今も悩み続けていたかも知れない。


「眼鏡の嬢ちゃんが思うようにすればええ。わしらはそれに従うだけじゃよ。じじいの世迷い言は気にせんでええ」


そう言ってアス老人は、もうこれ以上自分が意見を言うつもりがないのか、ひとり、酒を注ぎ、木の実を食べ始めた。

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