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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
39/205

横陣と鋒矢陣、一度目の接敵

「正面の敵だけに集中せよ。進めぇ! 目の前の敵を殺すことだけを考えろぉ~!」


温厚そのものだった王が、怒号を発しながら次々と敵を屠っていく。


返り血で真っ赤になるも、笑いながらモーニングスターと呼ばれる、棒状の先端にとげのある鉄球を振り回す。


両手にそれぞれ同じ武器を持って振り回すもんだから、味方も数メートルの距離を置き、近づかない。


相手が盾で防ごうが関係ない。軽装歩兵の防備では防げず、武器で受け止めたものは例外なく武器が破壊されていた。


正面に立った敵は、王が足を止めてでも、確実に動かなくなり、絶命するまで殴り続けたため、相手の士気を消失するのに時間はかからなかった。


倒れて戦意を失っていようが関係ない。


「ふはははははは」


そう笑いながら、命絶え、動かなくなるまで鉄球でなんども叩き潰す。


次に正面に立ったものが敵だ。


目が合った瞬間、いや視界に捕らえられた時点でターゲット認定される。


ゆっくりと歩いて近づいてきて、モーニングスターを振り下ろす。


突破を主体としたものであれば、突出しただけ囲まれたかも知れない。


ただ、ゆっくりとでも、目の前の敵を確実に蹂躙したのである。


戦闘開始から三十分も経たずに、さしたる被害もなく横陣を突破。


円形陣に到達すると、一番前の重装歩兵へ重い一撃を食らわす。


盾で受け止めるも、盾は容易に変形し、重装歩兵はすぐに盾を放棄。


片手剣を両手で持ち直し、王に対峙する。


内股になり、腰が引け、既にふるえている。


視線の先には、王が潰してきた死体の道があり、数秒後には自分もそうなっていることを想像、いや確信するのであった。





 王はにやっと笑うと、円形陣の奥の指揮官を目で探し、視界に捉えたのであろう、急に真顔になると、踵を返し、自軍に歩いて戻るのであった。


悠然と敵に背を向けて自陣に戻る姿をプルミエは黙って見送ることしかできず、立て直しの指示をするのに精一杯で、弓矢隊による狙撃を指示はついぞできなかった。


王とその重装歩兵部隊、両翼の重装歩兵も奮戦し、王の戦いぶりに戦意を失った敵をひたすら虐殺するという一方的なものとなったのである。


ただ、やり過ぎた感があり、集中した横陣の兵は途中から襲いかかることを止めたため、戦意喪失によって、中央八百のうち、およそ半数が生き残ることができた。

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