鋒矢陣による突撃
この陣形を見るや、フラハーは鋒矢の陣を選択した。
いわゆる矢印の陣形であり、実際にはあまり用いられない陣形ではある。
理由としては、突破力があるが、側面からの攻撃に弱いという欠点があるからと、先端を担う将のリスクが大きいからである。
しかし、回り込まれての横撃は考えにくい。
これは、敵が回り込もうとすると、どうしても森からの奇襲を受けるリスクがあるからである。
プルミエとすれば横陣の両サイドは正面の敵ではなく、森からの奇襲を警戒しなければならない。
従って、鋒矢陣はプルミエにとっても中央に集中できるため、ありがたかった。
そのため、フラハーが鋒矢陣で動き始めたとき、横陣の両端はそのままに、やや中央よりに厚めに陣を変形させたのだった。
しかしながら、フラハーにしてみれば、それこそが策である。
これにより、横陣の両端については森に釘付けであり、実質的に戦力から除外される。つまり、両端の各二百名、計四百名が実質的に離脱したことになる。
加えて、中央に厚みを持たせたことで対応したつもりなのだろうが、逆に、中央に集めてくれたお陰で撃破しやすくなったと考えていた。
軽装歩兵には重装歩兵をあてることで優位に立てるため、もとより突破力がある鋒矢陣の先端に重装歩兵を配せば、円形陣までは容易に到達できる見通しだ。
敵が陣形を形成した直後、フラハーは早速迎撃として鋒矢陣を形成、突撃を開始する。
先陣を切るのはフラハー王であり、重装歩兵隊百名である。
両サイドも重装歩兵が各百名であり、ワンテンポ遅れてついて行く。
ついで軽装歩兵五百が縦列で追随し、順次横陣につっこんでいく。
本陣には琴葉隊が指揮をとり、百名の軽装歩兵と百名の弓隊が予備兵として待機していた。
「王自ら先頭に立って突っ込んでいくなんて、さすがだなぁ。さすが、理想の上司だ」
朝美はそう言って、戦況を見守る。
のぞみは横陣の左右を見て、動くに動けない状況を確認する。
ついで、奥の円形陣にも変化がないことを見て、安堵する。
基本的には数ではかなり負けているのだ。
同様の動きをされれば、物量で負ける可能性が出てくる。
横陣千二百のうち、両サイドの合計四百が足止めされているので、結果的に横陣は八百になる。
単純に、フラハー軍と同数になるのだ。
つまり、兵科の違い、陣形の違いだけでみても、こちらの勝ちは確定的だ。
もちろん、指揮、士気を始め、兵の質や武器の質などもあるため、これらを考えるとより確定的だ。
そうさせないため、円形陣を解き、正面を厚くするか、敢えて横に展開して回避させ、円形陣で対応、横に展開した部隊で挟撃とするのが正しい対応であろう。
しかし、円形陣を解くことなく、そのまま横陣で対応しようとするあたり、指揮官の能力を疑う。
「あくまでも円形陣を解かねぇってことは、よほど自分の命が惜しいのかねぇ。突破されたら戦局は決定的だと思うんだが」
朝美は訝しんで、のぞみの方を見やるが、
「うん。動くと思ったんだけどね。ひょっとしたら、本当に次があって、今回は様子見にするつもりなのかも・・・・・・」
と言ってるが、自分で言って確証がないのであろう。
自信なさげに首をかしげている。




