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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
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鋒矢陣による突撃

 この陣形を見るや、フラハーは鋒矢の陣を選択した。


いわゆる矢印の陣形であり、実際にはあまり用いられない陣形ではある。


理由としては、突破力があるが、側面からの攻撃に弱いという欠点があるからと、先端を担う将のリスクが大きいからである。


しかし、回り込まれての横撃は考えにくい。


これは、敵が回り込もうとすると、どうしても森からの奇襲を受けるリスクがあるからである。


プルミエとすれば横陣の両サイドは正面の敵ではなく、森からの奇襲を警戒しなければならない。


従って、鋒矢陣はプルミエにとっても中央に集中できるため、ありがたかった。


そのため、フラハーが鋒矢陣で動き始めたとき、横陣の両端はそのままに、やや中央よりに厚めに陣を変形させたのだった。


しかしながら、フラハーにしてみれば、それこそが策である。


これにより、横陣の両端については森に釘付けであり、実質的に戦力から除外される。つまり、両端の各二百名、計四百名が実質的に離脱したことになる。


加えて、中央に厚みを持たせたことで対応したつもりなのだろうが、逆に、中央に集めてくれたお陰で撃破しやすくなったと考えていた。


軽装歩兵には重装歩兵をあてることで優位に立てるため、もとより突破力がある鋒矢陣の先端に重装歩兵を配せば、円形陣までは容易に到達できる見通しだ。





 敵が陣形を形成した直後、フラハーは早速迎撃として鋒矢陣を形成、突撃を開始する。


先陣を切るのはフラハー王であり、重装歩兵隊百名である。


両サイドも重装歩兵が各百名であり、ワンテンポ遅れてついて行く。


ついで軽装歩兵五百が縦列で追随し、順次横陣につっこんでいく。


本陣には琴葉隊が指揮をとり、百名の軽装歩兵と百名の弓隊が予備兵として待機していた。


「王自ら先頭に立って突っ込んでいくなんて、さすがだなぁ。さすが、理想の上司だ」


朝美はそう言って、戦況を見守る。


のぞみは横陣の左右を見て、動くに動けない状況を確認する。


ついで、奥の円形陣にも変化がないことを見て、安堵する。


基本的には数ではかなり負けているのだ。


同様の動きをされれば、物量で負ける可能性が出てくる。


横陣千二百のうち、両サイドの合計四百が足止めされているので、結果的に横陣は八百になる。


単純に、フラハー軍と同数になるのだ。


つまり、兵科の違い、陣形の違いだけでみても、こちらの勝ちは確定的だ。


もちろん、指揮、士気を始め、兵の質や武器の質などもあるため、これらを考えるとより確定的だ。


そうさせないため、円形陣を解き、正面を厚くするか、敢えて横に展開して回避させ、円形陣で対応、横に展開した部隊で挟撃とするのが正しい対応であろう。


しかし、円形陣を解くことなく、そのまま横陣で対応しようとするあたり、指揮官の能力を疑う。


「あくまでも円形陣を解かねぇってことは、よほど自分の命が惜しいのかねぇ。突破されたら戦局は決定的だと思うんだが」


朝美は訝しんで、のぞみの方を見やるが、


「うん。動くと思ったんだけどね。ひょっとしたら、本当に次があって、今回は様子見にするつもりなのかも・・・・・・」


と言ってるが、自分で言って確証がないのであろう。


自信なさげに首をかしげている。

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