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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
33/205

キャンプ地にて




翌朝、キャンプに王が顔を出してくれた。


「いかがですかな? 我が軍は」


そういうと、勝ち誇るわけでもなく、あくまでも真摯に問うてくる。


のぞみは昨夜話したことを一通り伝えると、


「そうですな。仰るとおりで、実際に戦場に展開できるのは二千、左右の伏兵含めて合計三千と言ったところかと思います。無論、砦の防衛をしないということだったり、近隣諸国の警備、駐屯を引き上げれば五千以上は集まります。今回は年に一度の総員訓練で、集合がかかっているだけですので」


と隠すことなく軍の戦力を述べる。





 意を決して、のぞみは罠や策について聞く。


「いや、仰ることはごもっともです。ただし、今回は戦地での罠や策は使用しません。使う意味があまりないというのと、正確には使わないことが策だと思いますので」


王は思ったとおり、怒るわけでもなくにこやかに答えてくれる。


「えっと、それはどういうことでしょうか?」


のぞみが真意を問う。


「相手の戦力と同数、あるいは、ちょっと少なめの人員を戦地に展開させ、相手に勝てるかもと思わせます。そして、特に罠や策がないことを理解してもらいます。そうすることで、さらに次の戦闘があった際にはこちらの戦力と戦術、戦略は闇に包まれたままとなりましょう」


そう言って、あくまでも笑顔で答えるが、十分に策士であり、大局を見渡していることが伺えた。


琴葉達は一様に安堵の表情を浮かべる。


すでに王はさらなる侵攻を踏まえた上で動いている。


そして、噂と異なり、罠や策を用いることにおそらくだが抵抗はない。


それどころか、駆使する可能性すらあると感じたからだ。


「ひとつ、聞きにくいことなんじゃが」


とアス老人が切り出し、王が


「なんなりと」


と答えると、臆することなくアス老人が尋ねる。


「歴史上、フラハーが負けたことは? その時があったならば、その敗因は?」


決して気分を悪くしたわけではなさそうだが、王は考え込む。


しばしの静寂の後、だいぶ前のことで、伝え聞いた話でしかなく、信憑性は定かでないのだが、と前置きした上で答える。


「過去数百年の間に、二度負けたことがあると。一回目は文字通り、大軍で侵攻され、数で圧倒して負けたとのこと。二回目は分散して侵攻され、こちらの戦力が多方面に咲かれている間に砦そのものを狙い撃ちされたとのことです」


「ふむ。昨夜話したのが、現実に起こったことがあったわけじゃな。だからこそ、全戦力を集中できないし、戦力の総量を見せないという今の策があるということか」


アス老人は頭を下げ、回答してくれたことへの感謝の意を示す。





 いつもは黙って他のことに集中している琴葉だが、突然会話に参加してきた。


「ねえねえ、前の侵攻のとき、同時に魔族が現れて、対向できなかった時ってどんなだったの?」


と興味津々で王に聞く。


王は苦虫を潰したような顔をして、答える。


「あのときは大変でした。私もまだ一兵士でしたが、目の前で魔族の恐ろしさを初めて体感しました。その時に先代の王が討たれたのもあって、大規模な軍が編成されたのです。魔族一人にこちらは二十人くらいがやられましたが、他にも魔獣などもおり、総勢で百人を超える死者が出ました。十数体の魔族の群れは一個軍隊に値するとは事実です」


琴葉は不謹慎にも目を輝かせ、うんうんと頷いて聞いている。


「へぇ~。どんな魔族だったの?」


と言って、魔獣図鑑を取り出し、巻末付録の魔族のページを見せながら聞く。


アス老人とテラガルドを一目見ると、王は明らかにとぼけ、覚えていないと返答した。


琴葉は残念がっていたが、秘密と言うことなのだろう。


王は、


「最終的には、マギー村の魔法使いの方が退治して下さって、我々は下っ端の魔族で精一杯でしたよ」


と肩をすくめて笑っていた。


「しっかし。魔族が単体でなく集団で行動し出くわすなんてとんだ厄災だったな。あたしらの国でなくて、オージュス連合の方に出没してくれたらいいのに」


そう言って、朝美は魔獣図鑑を読み出した琴葉の頭の上に手を置くと、ポンポンと叩く。


「今も、たまにその時の残党と思われる目撃例がでることもあって、定期的な駐屯や哨戒業務は行なっております」


「ふーん」


もう興味が無くなったのか、琴葉はそう呟くと、本をしまいにカバンの元へと歩いて行った。





「で、これからボクたちはどうすればよいでしょうか? ホルツホックからの依頼で、平野を見せた後生還させるというのがあるんですけど」


のぞみが言うと、王はすでに決まっていたのだろう。


「おそらくはまだ時間がありますので、この平野を中心に、左右の森を哨戒し、地形を把握されると良いでしょう。また、このキャンプを中心に我が兵達と交流を図っていただけると、戦場で役に立つと思われます。実際の戦争が開始された場合は、戦争に加わっていただくのも良いですし、ゲリラ的に動いていただいても構いません。その際は襲撃でも哨戒でもどちらでも。砦で静観していただいても良いですよ」


と答える。


要は自由にしてくれと言ったところだ。


「承知しました。ホルツホックの依頼は遂行します。それ以外は本日中に回答させて下さい」


と言って、総意を得る時間的な猶予をもらい、日中の訓練の見学を昨日に引き続き行なった。

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