負ける要素がない
のぞみ達は、二日間この地で過ごすことになるのだが、即席でこしらえた野営キャンプで再度話し合うのであった。
「こりゃ、相手には悪いが、絶対にこの平野は抜けないぜ」
朝美はそういって、木の実をポリポリとつまむ。
「そうだね。まさかこれほどの軍を持っているとはボクも思わなかったよ」
そう言って、のぞみも木の実をポリポリと食べる。
「まぁ、普段は四方に散っている部隊を全部かき集めた最大規模の訓練と言っておったから、本当なら実際に動員できるのは三千人くらいじゃろうなぁ」
アス老人はそういって、腕を組む。
「四方に哨戒、派兵をして、砦の防御に回して、仮に半分だとしても負ける要素はねぇよ。罠とか戦略、戦術を駆使すれば一万の兵も迎撃可能だぜ、ありゃ。しかも、ホルツホックが迎撃してくれてれば、到着した段階で五百は数が減っているだろうし、罠や魔獣、森での精神的疲労から、ここに到着した頃にはズタボロだよ。素手やり合っても負けねぇのにな」
朝美はそういって、木の実を放り投げて、口でキャッチする。
うまく口に入るとにやっと笑って、琴葉をみやると、案の定、琴葉もマネをしだす。
「こうなってくると、卑劣な罠やよっぽど卑怯なマネ、奇策が無い限りはこちらの勝ちは揺るがないね」
のぞみはなるべく琴葉を見ないようにして目線をそらすが、まだ成功していない。
「そうじゃなぁ。ちなみに、嬢ちゃんならどう攻略する?」
アス老人はのぞみの方を見て、問いかける。
「戦わないって言うのが、本音ですね。負ける可能性の高い戦はしないに限るので。ただ、戦うのが前提ですよね?」
「もちろんじゃ。戦う前提で、どういうやり方をするか、じゃ」
ですよね、と呟いて、人差し指で頬を搔く。
しばらく思案し、
「森での被害は想定した上で、やはり可能な限りの大軍を派兵します。平野に到着できるのが三千人、いえ二千人になればワンチャンあるかもしれないので」
「うむ。それで?」
「相手の出方次第ですが、正攻法しかやってこないように挑発をして、戦い方を限定するか、あるいは、敵に気付かれないように左右から迂回して背後を取る、あるいはこっそりと砦を落としてしまう・・・・・・とかですかね。砦の位置を知っていればという前提にはなってしまいますが」
「まぁ、そんなところじゃろうな。だからこそ、五千人いても、砦の防衛と、左右の森への伏兵に割かざるを得ないじゃろう。予備隊もかんがえると、やはりこちらも二千から三千くらいが戦地で対峙することになりそうじゃな。他国への派兵などや哨戒にも割くともっと少ないかもしれん。仮に二千として考えよう。森で伏兵しているのは最後まで使用しないものとして」
「持久戦にもっていきたいです。オージュス連合の他国の協力を取り付け、輜重、派兵をお願いします。やはり、数で優位に立ちたいので。それが叶わないならば、なるべく騎兵が機能しないように、馬防柵や塹壕を築き、弓での戦いに持ち込むくらいでしょうか」
アス老人が考え込むと、朝美が口を挟む。
「持久戦になった場合って、どっちが不利なんだ? 相手はオージュス連合からの支援があれば良いが、なければ兵站の関係で厳しい。こっちは支援体制含め問題ないわけだろ?」
「ボクがさっきも言ったとおり、相手方に時間を与えると、平野で何らかの簡易な砦を築かれる可能性が高いから、仮にオージュス連合からの支援がなくても好ましくはないよね。もちろん、兵站の問題はあるけど」
のぞみは思い付く限りで答える。
一同、唸るが、敵側の立場にたって考えても、勝機が見いだせないというのが結論だった。
「だぁ~っ!」
という琴葉の叫び声とともに、空中に十数粒の木の実が舞い、口をあんぐりとあけて上を向くのだが、一粒も口には入らなかった。
そこで、その日の話は打ち切りになるのであった。




