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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
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ホルツホック国の集落到着

 日の出よりは少し経ってしまったが、徹夜番をしていた二人が、罠の解除や焚き火の処理など、出発準備をしておいてくれたお陰で、起床から一時間もせずに出発することができた。


四時間ほど歩き、ホルツホックへと到着する頃には、日が真上にさしかかっていた。


迷わず最短で歩くことができれば、国境から半日もかからず到着できるだろうと思われるこの国は、おそらくは実体がほとんどない。


というよりは、国境に接し、歴史上幾度となく侵略の最前面に立たされた国である。


本当に実体があるならば、とうの昔に滅んでいたであろう。


例えるならば、移動遊牧民の様なものである。


実際には、ホルツホックの人は木上に小屋を建て、そこで生活をしている。


各木がロープや板で接合されており、お互いに行き来するような集落を、森の中にいくつあるのかは不明だが点在させている。


無論、地上には普通に降りるし、二~三年に一度は集落を移動させるので、定住と呼べるのかどうかは不明だ。


侵攻の度に相手の拠点が変わるわけで、それが複数に分かれているということは、侵入の都度マップがランダムで変化するダンジョンに足を踏み入れるようなものだ。


周囲には魔獣が存在するので警戒は怠れない上に、足下の地面には罠が点在する。


しかし、実際の敵は木上におり、弓矢や吹き矢、落石、投げ槍などが降ってくる。


文字通り、三次元の警戒対応に迫られる。


これが、見知らぬ敵地、それも夜は漆黒の闇であり、場所を把握しづらい森の地形で行なわれるのだ。


そして、何よりも、最終目的地がはっきりとしない中での行軍とあって、侵略を非常に困難とさせていた。


カンナグァ連邦の最初にして最大の関門とも言えるが、実は最後の関門でもある。


それは、全滅することがほぼありえないため、最後の最後までゲリラ戦が可能だということだ。


なので、一度この国の迎撃を知った敵は、殲滅戦をしかけるのではなく、いかに被害を最小限にして、奥地へと到達するかに目標を変更する。


実はもう一つ、最後の関門と呼ばれる所以があるのだが・・・・・・。





 琴葉達が最初にホルツホックに到着した際に立ち寄った集落へと戻ると、集落一と言われる戦士が迎え入れた。


簡易な革鎧は普通だが、特徴的な装備が何度見ても異様に映る。


両手両足に金属製のかぎ爪をつけており、両手首、腰にロープを何重かに巻いている。


一度見るとなるほどと思うのだが、かぎ爪をつかって、十メートル以上の木を瞬く間に登るのだ。


さすが、木上で生活しているだけはある。


聞くと、戦士でなくても、四肢に支障の無い者は誰でもできるようになっているとのことだ。





 戦士と言っても、きちんと礼儀はしており、謙虚そのものである。


「ご無事で何よりです。まずは族長へとご案内致しましょう」


そういうと、太いのは確かだが、何の変哲もない木へと歩み寄り、かぎ爪を使用してするすると上っていく。


上を見上げるが、ぱっと見では小屋のようなものは見えないが、言われてみると不自然な葉っぱの密集や枝の集合があり、カモフラージュだと指摘されれば納得できなくはないレベルだ。


しばらくして、縄ばしごとゴンドラが降りてくる。


「お一方ずつお上がりください。武器や荷物はゴンドラにお願いします。引き上げますので」


声だけが聞こえてくるが、琴葉達は指示に従う。


初回こそ警戒したが、数度繰り返すうちに馴れた。


「じゃあ、わたしはいつも通り、最後に行くから」


琴葉はスカートなのを気にして言うが、誰も興味ないことは皆指摘しない。

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