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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
12/205

キャンプ準備

 二人を見送ると、三人で手分けしてキャンプを張る。


火起こしはのぞみが行なっていた。


夜もかなり遅いことと、国境からだいぶ離れていることもあり、焚き火自体が敵に捕捉される心配が少ないこと、仮に捕捉されたとしても襲来の危険性が低いことを踏まえた判断である。


春といっても、まだ少し肌寒い。


耐えられないわけではないが、火はあるに越したことはない。


琴葉が火の魔法を使用できるため、予め用意しておくことで、いざというときに「操」で使用することもできる。


性格に難はあるが、魔法を実践レベルで使用できる数少ない魔法使いであり、さらに希有な「創」と「操」の両方を使用できるレアな存在なのだ。


人は「天は二物を与えず」とか「馬鹿に刃物」というが、おおよそ間違っていないのが悲しいところだ。





 琴葉はテラガルドと一緒にテントを張り、開けた地と森の境界線を敷くように簡易な罠を仕掛けていく。


迎撃用と言うよりも、誰か入ってきたときにわかるようにといった「鳴子」と言われるものだ。


少なくとも、地に足をつけた魔獣であればこれで十分だろう。


もちろん、鳥獣型の魔獣であれば役には立たないが、やれることはやっておくに越したことはない。


そう、すこしでも生存確率をあげるために。





 テントができると、琴葉は一人仮眠を取る。


予め決めていたことだ。


今日はテラガルドと琴葉が徹夜で見張ることとなっているため、今のうちに仮眠を取ることになったのだ。


本来であれば、非戦闘員であるテラガルドとアス老人が見張り役となるのだが、今回の作戦行動でたいして活躍をしなかった琴葉が参加となった。


テラガルドはその巨躯に似合わず、戦闘力は並以上にあるのだが、この隊においては非戦闘要員となっている。


少女三人を主力とするため、そのサポートに徹しているというのが一つの理由である。


非戦闘員といえども、今回のような拠点防衛を担うこともあるし、いざいざ戦闘になれば狙われることも多いため、多少なりとも戦闘ができる場合が多い。


また、物資の調達や輸送、野営準備など力仕事も多いため、適任ともいえよう。





「ところで、テラガルドさん。襲ってきた魔獣ってどんなでした?」


黙々と食事の準備をしていたのぞみが思い出したようにテラガルドに尋ねる。


焚き火に薪を放り投げつつ、テラガルドは返答する。


「ヤマネコ型の魔獣でした。単体でしたが、非常に運良く追い払うことができました」


急に真顔になり、のぞみはテラガルドを凝視する。


「そ、それは危なかったですね。よくご無事で」


「ははは。本当に。運良く薪を準備して鉈を手にもっていたのですが、突然飛びかかられまして。無意識に横に振り払ったら偶然にも当たったんですよ。すぐに逃げていきましたが、幸運としかいえないですね」


そう言って、柔かな笑みを浮かべるが、実際に本当に運が良かったとしかいえない。


ネコ型だけあって、群れをなさないが、その俊敏性はやっかいで、テラガルドのような斧で力任せに一撃を放つタイプには相性が悪い。


当たれば防御力は高くないのだが、当たらない。


警戒心も高いため、再度襲来はしてこない可能性が高いが、警戒するに越したことはないだろう。


また全員が揃ったときに情報共有することを二人で話し、食事の準備を続けた。

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