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匙の絆  作者: らむね。
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小学生編②

朝起きたら、体が熱いような寒いような変な感じがして、熱を測ったら38℃もあって、それを見たら余計に具合が悪くなってしまった。

お母さんが学校におやすみの連絡をしてくれて、明るい時間なのにベッドに入って目を閉じたけれど、頭がガンガン痛くなってきた。

冷えピタを貼ったくれたお母さんは、「お昼に一回戻るから」って言ってお仕事に行ってしまった。

お留守番は、もう2年生なんだから何回もしてるし、普段はそれがちょっと楽しみで、誰もいない家でこっそりお母さんの部屋の漫画を読んだり、ゲームをしたり、テレビを独り占めして見たりするんだけれども、今は・・・。


玄関のドアの音で、目が覚める。

靴を脱ぐ音と、ビニール袋の音もするから、お母さんが帰ってきたんだ。

体を起こすと、節々が痛いけれど、少し楽になったような気もする。

階段を降りて台所に行くと、お母さんがあったかい卵とじうどんを作ってくれていた。

うどんを啜りながら、普段なら見れない平日お昼のテレビを見る。ピンク色の恐竜、可愛い。

それから、特別にアニメのビデオを見せてもらったりして。

風邪引きは辛いけれど、たまにはこんな日もいいよね、なんて思ったり。

そのままソファで寝ようとしてたら、お母さんにベッドまで行きなさいって怒られちゃった。


次に目が覚めたのは、外から学校帰りの声がした時だった。

突然、学校のみんなのことを考えてしまう。

今日の授業はどんなだったかな。給食はなんだったのかな。いつもいちみちゃんと自由帳に書いてる「ないしょのおはなし」、今日は書けなかったな。らむねくんは、今日も先生に怒られたのかな。ゆさくんは、忘れずにプチトマトにお水あげたかな。

そわそわしてしまって、ベランダに出てみた。夕方より少し前の風が、少し火照った体に気持ちがいい。

誰か知ってる子が通らないかな、って思っていたら、向こうからいつもの3人が歩いてくるのが見えた。らむねくんが猫じゃらしをぶんぶん振って、ゆさくんが石を蹴って、いちみちゃんがランドセルから何か出そうとしてる。

思わず、こっちに気づかれないうちに部屋に入って、ベッドに潜り込んでしまった。

みんなが、わたしの家に来てくれるとは限らない。そうじゃなかったら悲しい。

でも、来てくれたらいいな、来てくれたら嬉しいな、そう思っていたら玄関のチャイムが「ピンポーン」って鳴った。


お母さんに呼ばれて玄関に行ったら、3人がいた。

少し照れてしまって、もごもごと「ありがと」って言ったら、いちみちゃんが「もう熱は下がった?」って心配そうな顔で聞いてくれた。「今日の給食、プリン出たけど、くろまるちゃんの分もらっちゃった」と笑うらむねくん。「じゃんけんで負けたんだよなあ」とゆさくん。

つられてわたしも、えへへって笑っていたら、なんだか体のだるさが軽くなった気がした。

「らむね、くろまるちゃんに見せてあげようよ」

ゆさくんがらむねくんの肩を叩くと、らむねくんが「いや、あれは、見せない!」って恥ずかしがって。いちみちゃんがこっそりひそひそ声で教えてくれたんだ。

「あのね、らむねくんね、算数の時間にくろまるちゃんの絵描いてたんだよ」

「違うよ、みんなの絵描いてただけだから!ゆさの絵も描いたし、いちみちゃんのも描いたから!」

いちみちゃんが、普段よりイタズラっ子な顔してるのに気づいて、らむねくんとゆさくんがお互いに「くん」って付けなくなってるのに気づいて、ゆさくんが笑う時、一回鼻をすすって手の甲で口を隠す癖に気づいて。

一日学校に行かなかっただけなのに、突然気づいたことがいっぱいあった。

「またね、早く学校でね」って、3人が帰っていくのをお母さんと見送る。

晩ご飯はどうするって、お母さんに聞かれて、「早く元気になるもの!」って答えた。

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