寝取られ…?
前書き無しで話が進むのが変なので…
一応寝取られモノです。一応です。ガッツリを期待していた方は申し訳ありません。後とても短いです。
バッドエンドです。
ある意味ハッピーかもしれません。
真里が寝取られているのに俺が気付いたのは何週間か前からだった。真里は俺と幼なじみで、小中高と同じ学校を通ってきて、高校生になって真里から俺に告白されたのだ。普通寝取られは男の方から告白する物だと思っていたのだが。まぁそこは多分どうでも良い。告白された俺は少し考えてからokする事にした。俺はそこそこ顔は良かったし、性格も客観的に見ていい方だったと思う。告白は何度かされた。真里は俺が高校生になって他の子にとられると思ったのだろう。俺は真里と仲が良かったし、彼女の好意にも気付いていた。真里は「いつまでも待ってあげられないから!」とか言っていたが。何を待つと言うのだ。そして、俺が気付いたのが何故かと言うと、彼女は最近俺に付き合わなくなってきたのだ。それだけで寝取られてると言っているわけじゃない。確実な証拠もある。俺は彼女にラインでデートに誘ったが彼女は風邪で体調が悪いと、うつしたら悪いからと断った。そこで彼女の家にお見舞いに行ったのだが、男が彼女の家に入っていっていた。それだけならまぁ…寝取られてとまではいかなくとも怪しいのでは?と思うだろう。誰でも。というかデートを断って男を家に連れ込む時点でほぼアウトだろう。理由を聞かなければと思ったが、卑猥な声が聞こえてきた。わりと大きな声で叫んでいたし、壁が薄いのだろうか?なんて、へーという感じで聞いていた。なぜ彼女が寝取られているにもかかわらずこんなにぼけっとしていられるのかだって?だって俺、あいつ好きじゃないし。好きじゃないならなぜ付き合ったのか?まぁ、親同士が仲良かったし、別に俺は女に興味がないわけでもない。それなりに幸せに過ごせればそれで良かった。というか、幼なじみがクズだったとは…。俺も見る目がないな。なんてことを考えて家に帰った。
LINEでは断ったことをごめんと伝えてくる真里が、風邪気味だの感染したら悪いだの。考えてみれば何回か同じことはあったし、怪しいと思っていたが、まさか本当にヤっていたとは。怖いな。気づかなかったら知らない男の子供を俺の子供にされていたかもしれない。というか、ラインがまた来てる。「今度は家に来て」とか。これ絶対中に出されたよね。俺にもさせるつもりだよね。それで出来ちゃったってなるパターンだよね。恐っ。あいつそんな女だったの?俺の幼馴染みながらおそるべし。
俺じゃなかったら人間不信になってるかもな。
…うーん。とりあえず別れるけど、彼女は素直に謝ってくれるかな…?
でもなんて話を切り出そう…と考えていたらうとうとしてきて寝てしまった。
次の日学校に行ったら、彼女がベタベタ俺にスキンシップ?ボディタッチ?をして来る。周りからはヒューヒューだの。うらやましーだの。ラブラブーだの。言われているが、この関係相当黒いですよ。なんて心の中で返していた。
家に帰る途中で、真里から「今日家に来てくれるよね?」と言われたので、「ごめん、大事な用事があるんだ。」と返したら、「私の家に来るより大事な事?」と言われたので、「すまん。」と言ったらあっさり引いてくれた。「そう…。」とか言って。妙に引きがいいなぁ…。怪しいなぁ。なんて思ってコンビニ寄って本屋で立ち読みしていて、気がついたらもう外は暗くなっていた。スマホを見たら母さんから着信履歴が沢山入っていた。そんなに掛けなくてももう帰るよ。と心の中で呟いて、家に帰ったら彼女のお母さんと親父さんが俺の家にいた。リビングの、椅子で、俺を待ち構えるように。
正座しろと彼女母に言われた。待て待て、俺が何をした。とりあえず聞いてみようと思い
「いったいなんですか?この騒ぎは」
と言ったら彼女父に思い切り殴られた。ええ。嘘やん。あんた温厚やったやん。俺が彼氏になったの報告したらホクホク顔やったやん。えぇ。彼女母はなんか微妙な顔してるし。俺の母もなんか申し訳なさそうな顔で。俺に睨み効かせてるし。
ふぅ…。良かった。…え?何がって?親父がいないことだよ。親父だったら多分もう殴り飛ばして蹴飛ばして即救急車だったかもしれない。
というか殺されていたかもしれない。
「とぼけるな!!」
What!?俺が何をしたと言うのだ?話が分からん。そんなことを考えていたら彼女母が重そうな口を開いた。
「真里がね、最近俺君が冷たくなって、浮気してるんじゃないかって。泣きながら訴えてきたの。」
え?え?えぇ…?…嘘だろあの女…まじかよ。
流石にこの俺も動揺が隠せない。その俺の動揺をなんの動揺だと思ったのか、彼女父が、叫びながら、「うちの娘を誑かしやがってええええぇ!!」と、殴りまくってきた。
俺は抵抗しなかった。しても良いんだけど、正当防衛だし。
でもなぁ…。なんかこう。今まで幼馴染してた、彼女だったやつが、ここまでクズなのかと。そして母さんも、少しは息子を信じてくれてもいいのではないだろうか。俺はここでスマホのラインの履歴を見せて、、冷たくされているのは俺だぁぁぁぁ!!と叫んでやろうかと思ったが、そうはしなかった。いや、しても良かったんだけど。
何故かやる気が起きねぇ。殴られっぱなしだし。これ鼻折れたんじゃね。つか歯も折れたって。熱い。鼻血?てか前見えねぇ。クラクラする。
流石にやりすぎだと思ったのだろうか。彼女母と俺の母が止めに入った。
「なんで止めるんだぁぁ!!俺の娘をおおお。」
「良い加減にしなさい!!」
彼女母の言葉にビクッとした彼女父は俺から離れて椅子に座った。
救急車呼ばねぇとまずいって。これ。死ぬ。マジ。だってそうだろ?防御もせず顔面何十発も本気で殴られたんだぜ?顔からは血が止まらないし、ぼとぼと血が、あ、歯落ちた。
そんな命の危険を感じている俺に彼女母は関係ないかの如く話しかけてくる。
「うちの娘をね、たぶらかされたの、私すごく怒ってるの。はらわたが煮えくりかえそうなくらい。」
そう言って淡々と話を告げていく彼女母
その顔は苦虫を噛み潰したような、怒り、悲しみを我慢しているような顔で。
「それと同時にね、浮気をするような男を、大丈夫だと思った夫と私自身にも怒っているの。」
「娘と別れなさい、ちゃんときちんと謝って。」
そういうと、彼女母はスマホを取り出し、電話を掛けた。
「もしもし、母さんよ。今俺君の家にいるの。理由は後で話すから、とりあえず来なさい。今すぐ。」
そう告げた10分後ほどだろうか。俺には永遠にも等しい時間だったが。扉が開いて。彼女が顔を見せた。俺の顔を見た時、すんごい顔をしていた。青ざめ、というか。幽霊でも見たような。いやまぁそうだよな。俺血だらけだし。顔やばいし。てか今すぐ救急車呼ばないとまずいて。
「ぢょ、ぎゅぁぎぁゅしゃよんでもいぃでずが」
口も変な感じがしてちゃんと言えたかは分からない。彼女は未だに口を開かない。血の気が引いた顔で足を震わせて俺を見ている、ような気がする。もう視界がぼやけて、というか血が目に入って。
「我慢しなさい。ほら。真里。あんたにこの浮気男が言いたい事があるそうよ。」
「………ぁ………ぇ……」
真里の口からはそんな声が漏れていた。
そりゃあそうだろう。
俺がデートに誘っても何かと忙しい、病気だと冷たくされていたのに、俺が家に誘われて行かなかっただけで浮気者扱いをされているのだ。というかなんなんだお前は。なんか言えよ。俺死ぬって。マジで。
意識が朦朧としてきて、フラフラしてきて、正座もうまくとれなくて、そんなふらふらしているのが気に入らなかったのか、彼女母に、追撃のビンタを喰らった。
ーー俺は倒れた。
ーーんぁ…。ここは…。起きたら病室のベッドの上だった。救急車に運ばれたらしい。とりあえずナースコールを押した。顔はどうなっているのだろう。見たくもない。すぐにナースさんが来た。驚いた顔をして先生を呼びにいった。そして先生が来てから20分ほど経って警察も来た。先生からは自分がどんな状態か。ちゃんと目が見えているかなど、検査を受けた。俺は彼女父に殴られた後遺症が残っているそうだ。脳にダメージが入ってしまったようで、体が、というか足がうまく動かせなくなるという後遺症らしい。これから一生松葉杖生活だと言われた。その時初めて喪失感が押し寄せた。その後ベッドで警察からの話を聞いた。どうやら救急車を呼んだのは親父らしい。その後真里の父と母と俺の母と父と彼女で、警察に行ったらしい。俺の父は後から来て、違うと言い張ってくれているそうだが。てっきり殴り飛ばされると思ってきたから、拍子抜けだ。
んで、彼女母や父は俺が冷たく彼女に接して、浮気をして彼女を誑かしたから殴ったと言っているそうだ。あくまで悪いのは俺、という感じで。彼女は何も話さなかったそうだが。
俺は警察にあったことを正直に話したほうがいいか、迷った。迷った結果、警察は真面目そうな人で、信頼できそうな人だった。だからまず俺は浮気をしていないというのと、ラインの履歴を見せたりして、冷たくされたのは俺だとハッキリ言った。その後、彼女が浮気をしている可能性があるということも言った。一応弁護士とかも来るそうだ。親父がなんとかしてくれるらしい。頼りになる。
その後彼女は結局白状した。自分が男の人と関係をもっていたこと。中に出されてどうすればいいか焦って咄嗟に俺に家に来て出してもらえば俺の子になって、幸せに暮らせると思ったらしい。それで俺に断られたから、彼女はその焦りからか親に少し話を盛って話したらしい。そして親が勘違いしてこの結果ということだ。俺はその話を聞いても特に恨みなどの感情は無かった。だけど、自分の足で歩けなくなってしまったことへの後悔。失ってしまったという、気持ちだけがモヤモヤと心の中で渦巻いている。
その後彼女は転校、引越しをした。俺は当然ながら裁判で勝訴し、多額の慰謝料も貰った。彼女父は傷害罪で懲役6年になった。その裁判の後に親父は母さんと離婚した。母さんは俺を、息子を信じてくれなかった。それだけじゃなく、浮気をしていたらしい。父さんはそれでも母さんを愛していたらしい。たまたま風呂場で親父が泣いているのを見て…聞いてしまった。今まで泣いた所なんて見せた事ない親父が。
高校ではいろいろ噂になっていた。俺が何かをしたとか。彼女が何かをしたとか。俺も居心地が悪くて転校した。
転校した先では親父と仲良くなった。今まで全然話さなかったのに。
「俺ら親子は女に運がないな!!ハハハ!」
と、酒を飲んで泣きながら笑っていた。
親父はその後酒を買ってくるつもりだったのだろうか。フラッと家を出て行って、道路を走ってきたトラックにぶつかって死んだ。
ぐしゃぐしゃだった。肉塊。あれが親父と言われても俺は信じられなかった。
ついさっきまでお酒を飲んで泣いていた親父が、
嘘だ。嘘だ。
俺は何を間違えたんだろうか。
彼女だけが悪かったんだろうか。
俺にも何か悪いところがあったのだろうか、
俺は寝取られはした方が悪いと考えていた。脅されていたとしても、それを彼氏に頼らないのはどうなのかと。そのための彼氏なんじゃないのかと。そもそもフィクションで現実には起こらないと思っていた。
転校した高校を俺はなんとか卒業した。
当然、と言っていいのか悪いのか、真里の父親に殴られた顔は酷いもので、彼女や恋人の類は出来なかった。
いつか医療が発展したら。
俺の体の不自由は治るのだろうか。
いや、俺の生きている間はきっと無理だろう。
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俺は酒にハマっていった。飲んでいれば、フラッと親父が帰ってきそうな気がして。
気づけば貰った慰謝料も親父の保険金も底をつき掛けていた。
最後に残った金でライターと灯油と、酒を沢山買った。
親父の遺骨を取り出して酒を掛けた。俺自身にも掛けた。ビチャビチャと音を立てて。
沢山の種類のお酒を飲んで掛けた
ゴクゴク
ビチャビチャと音がなる
酒の味がしない。飲めているかも分からない。
あった酒を使い切ったら灯油を頭から被った。
喉が焼けるように痛い。変な匂いがする。
そして最後に、
ライターをカチリと鳴らし
その救いの火をつけた。
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