06
安息日らしい穏やかな天気である。
秋晴れと言う言葉に相応しく、薄絹のような雲がわずかにあるくらいで、高い天球は丸く澄み切っていた。
「あら、珍しい」
「温室に行く前に立ち寄っただけだ」
「どうせならミサにも出席しなさいよ」
「リリアーヌこそ、今週も街へ出かけなかったのか」
リリアーヌが入ってきたのは、女学校にある小さな教会の最上階の小部屋だ。
現在は物置として使用されているが、置かれているのはかび臭い書類と書物である。大聖堂に責務が移動する前の事件の記録や、それにかかわる書類の写し、そしてわずかばかりだが、当時のエクソシストが残した資料が残されていた。
半ば予想していた先客にリリアーヌが声をかけると、金髪の魔女は窓辺に手をついたまま振り返った。
「ちょっとね、こっちのミサはどんなものかしらと思って」
リリアーヌもまた窓辺に近寄ると、窓の外を見やる。窓からは校舎と学生寮とがある領域に続く道と、その道の逆方向へ延びる温室に続く小道とが見下ろせる。
「モモだ」
「ほんと、でもどうして温室の方から?」
ローズの呟きに、リリアーヌが彼女の視線を追えば、温室へ続く小道に、大きな帽子、クラシックなドレスと黒いレースの手袋に身を包む少女の手を引くモモの姿。
サラのアレンジなのか、手が込んだハーフアップに、真珠と銀の髪飾りをさしている。
「バラを持ってきてくれたのかもしれない」
「ローズに?」
意外そうにローズを見やれば、ローズは連れ立つ二人の少女たちから目をそらすことなく答えた。
「お世話になっている伯爵が趣味で品種改良をされているらしく、珍しい品種を見せてくれたんだ」
興味がないのか、リリアーヌは気のない返事をして、視線を泳がせた。
目に入ってきたのは、校舎へ続く道をこちらに向かって歩いてくる二人組。仔馬の尻尾のように明るい金髪を頭の高いところでくくった少女と、チョコレート色の髪を少し手の込んだ編み込みにした少女。
今度はリリアーヌが、視線の先に見つけた少女たちの名前を口にする。
「マーガレットだわ。一緒にいる子は確か、リタだったかしら?」




