7-12
「それで、リジー」
リジーがきちんと落ち着くのを待ってから、教皇が優しく声をかけた。
「今日はあなたの力を私に見せに来てくださった、ということでよろしいのですね?」
「あー、本日、我々はですね」
気を取り直して、ガルモンド侯爵が答えた。
「単刀直入に言って、教皇台下にご挨拶をして、エリザベスの力について台下にお墨付きを頂きたく、参上いたしました」
「そうなのですか、リジー?」
教皇は穏やかな口調のままだったが、私にはその目が政治家としての眼光を放ったように見えた。
「はい、そうです」
事前の打ち合わせでもそのことは話しておいたので、リジーは澱みなくそう答えてくれた。
「挨拶とは、またご丁寧なことですね。それで、『お墨付き』というのは? 私にどうしろと?」
「エリザベスの力は台下にご覧いただいた通りです」
教皇はリジーばかり見ていたが、ガルモンド侯爵が彼女に代わって答えた。
「ですが、彼女を『魔女』などと罵る不届き者もございます。
台下もご存知のように、我が王国は隣国ダームガルスと戦争の最中にあり、我々は正統なメシア教の信仰を守りたいと考えています。
そのためには彼女の力が必要です。
台下にはぜひとも、エリザベスがメシア教徒と呼ばれるにふさわしい人物であり、彼女の力が主から授かった正統なものであることを承認していただきたいのです」
「つまり」
教皇が探るようにガルモンド侯爵を見た。
「私に教皇として、ウベルギラスとダームガルスとの戦争に関して、ウベルギラスを支持しろと、そうおっしゃるのですね?」
教皇がリジーをわざわざ「メシア教徒と呼ばれるにふさわしい人物」と認めるということは、彼女を「聖女」として認定することに等しい。
聖女を擁するからにはウベルギラスとその軍隊は正統なメシア教の勢力であり、それと戦うダームガルス軍は異端ということになる。
「恐れながら、それは結果としてそのようにご検討していただくという話でありまして」
ガルモンド侯爵が返した。
「私たちが申し上げているのは、まずはエリザベスの力をメシア教の観点から正統なものと認めていただきたいということです」
今回の私たちの旅の第一の目的は、ウベルギラス軍が教皇庁の軍事援助を得ることではなく、半神である「プライモアの悪魔」を公爵の軟禁から解放させることだった。
だから、ガルモンド侯爵も教皇にリジーを「聖女」と認定させることに躍起になっていた。




