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我が王国ウベルギラスの王都ウーヘンは、政治・交易・軍事・文化・学問の中心地であり、世界で最も洗練された都市だと、王国臣民はみんな信じていた。
当時の私が見た王都も、私の期待を裏切らない素晴らしい街だった。
ざっと見た限りでも人・住居・商店の密集の仕方が他のどんな街とも違っているのはもちろんのことだが、どの建物も、というか多彩に色づけされた石像に至るまで、見上げるように高かった。
私たちは王都を訪れたこの日(1月25日)も甲冑を着ていた。
急な敵襲に備えるためなのか、いつでも油断していないというポーズなのか定かでないが、戦争中の軍人は王城でも甲冑を身に着けるのが我が王国の習わしだそうだ。
その割に、王城に入るときには国王に敵意がないことを示すため、(名目上は自主的に)衛兵に剣や弓矢を預けるのだから、この慣習はちょっと矛盾している、と私は思った。
王城は王都のちょうど中心にそびえたち、近くで見上げると大きすぎて怖くなるほどの大建築物だった。
戦闘に耐えうる造りであることは言うまでもないが、同時に美しく、それ自体がひとつの大きな芸術品といった具合だった。
まさしく、国王の威光をその建物によって表現するのだという建築家の気概が感じられた。
広大にしてよく整えられた庭園。
細やかなデザインが荘厳さを感じさせる外観。
惜しげもなく緻密な装飾を隅々まで施した内装。
その壁には神の国の偉大さがこれでもかと描かれていた。
私たちの多くはつい立ち止まって、口をぽかんと開けてしまった。
だが、王城の衛兵は当然ながらそういったものを見慣れているようで、私たちの反応に少々うんざりしている様子だった。
国王との謁見を許されたのは、ガルモンド侯爵をはじめとした子爵以上の将校たちとリジーだけだった。
メアリー、スタンリー、ランギス姉弟、私など「護衛係」扱いの人間は別室で待機した。
メアリーとアニーの2人はしきりに、リジーが粗相をしないか心配していた。
しばらくして謁見の間から出てきたマイクロフトは珍しく疲れた顔をしていた。
ガルモンド侯爵はこういうことも慣れているのか、特に変わった様子はなかった。
最後にリジーが出てきて、待っていた私たちにニッコリと笑った。
どうやら、国王、宰相との話し合いは上手くいったらしい。
私たちは予定通り、教皇庁に向かうことになった。
物語の舞台は11世紀のヨーロッパに近いという設定なので、まだルネサンスが来ていません。
目が肥えていない当時の人々は当時の芸術や建築物に感動していたでしょうが、ジャコブたちが見た壁画は、仏教徒にとっての曼陀羅のようにありがたいものではあるにせよ、当時の目から見てもあまり写実的には感じられなかったはずです。ですから、「まるで本物のようだった」というような表現は使っていません。また、11世紀はロマネスク様式の時代ですが、新たな様式が出るたびに王城が建て替えられるというのも不自然かなと思ったので、王城に当時の最新技術が駆使されているという設定は採用しないことにしました。




