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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第7章 イルハンス
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7-2

 当時、長旅は一般的に命懸けで行くものだったが、私は別にそれでも構わなかった。

 気になったのは旅程が長いことよりも、リジーと私が馬を持っていないことだった。

 だが、この問題は思いの外あっさりと解決した。

 農業が休みの季節だったので、ルンデン近郊の豪農から馬を借りることができたのだ。

 私はドーリス団討伐の頃に実家の馬を乗り回したことがあり、乗馬ができた(さすがに騎兵のように乗馬したまま武器を扱うことはできなかったが)。

 リジーには乗馬経験がなかったが、練習してみると驚異的な早さで馬と打ち解けたので、彼女も馬で行くことになった。


 マイクロフトが留守にする間、小隊に関することは副長のレイモンドが執り行うことになった。


 私たちが出発する朝、ニコラスがレイモンドと共に私たちを見送りにやってきた。

 さすがに言葉には出さなかったが、マイクロフトに置いていかれて寂しく思っていたのかもしれない。

 ニコラスは半神なので、私たちと一緒に教皇庁に行く展開もあり得たのだが、一応戦争中なので、ニコラスを前線から離脱させるのは得策ではないということになった。

 それでもニコラスはマイクロフトの護衛をしたいと繰り返し申し出ていたが、いつも同じ文言でかわされていた。

「俺に護衛は必要ない。それに、いざとなればリジーの治癒魔法がある。お前が心配することは何もないよ」




 ルンデンから王都までは、早馬を5日ほど走らせれば着くのだが、私たちが行ったときは雪道や雪解け道のせいであまり速度を出せず、10日かかった。

 私が当初思っていたよりも行き当たりばったりの旅だったが、ガルモンド侯爵が無理を通してくれたおかげで、私たちは野宿せずに済んだ。

 宿に空き部屋がなくても、王国軍の権威と権力をちらつかせて空き部屋を作ってもらったのである。

 マイクロフトが言うには、

「我々は公務で、つまり王国のために旅をするんだから、こういうことも許されて然るべきさ」

 とのことだった。

 ガルモンド侯爵たち貴族には何の罪悪感もないらしかったが、最初の夜、リジーは私たちのために宿を追い出される客たちを憐れんで、ケガや病気があれば治そうかと進言した。

 だが、いつの間にかケガ人・病人に治癒魔法を施すために村中を歩き回る羽目になって、その後はもうそういうことは言わなくなった

(それに、どうやら彼女の治癒魔法自体が、わずかずつだが体力を消耗するようだった)。


 ちなみに、毎晩の馬の世話はガルモンド侯爵の部下で馬好きのファルド男爵と、スクライブ伯爵の部下の平民2人、そして私の4人が担当した。

 私は4人の中で最も体力があったので、最もひどく働かされた。

 私たち4人はこの旅で服の隅々まですっかり馬臭くなり、何人かの貴族は私たちが近付くと顔をしかめるようになった

(おそらく匂い以外に顔をしかめられる理由はなかったと思う)。


 宿泊する村の人々が準備を整えてくれる度、ガルモンド侯爵は小規模ながら宴会を開いた。

 しかし、メアリー、スタンリー、ランギス姉弟、私などの護衛係は飲酒を禁じられた。

 貴族たちとリジーが心地良く酒を飲んで心地良く話しているのに(もちろんリジーは酔っているふりだったが)自分は飲めないというのは、酒好きな私にはつらい時間だった。


 盗賊にでも襲われれば話のタネになったかもしれないが、そういう連中には遭わなかった。

 私たちは着替えや自分の財産(の一部)など多くの荷物を運んでいたが、皆が揃って甲冑を着ていたから、きっとそのせいで盗賊どもも怖気づいたのだろう。

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