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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第7章 イルハンス
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7-1

 そうこうしている内にクリスマスが過ぎ、大雪が降って、戦争は事実上の休戦となった。

 大雪の季節に入ったら休戦するという取り決めがある訳ではないのだが、ウベルギラスもダームガルスも毎年この時期は雪が多く降る地域で、鍛え上げられた軍隊でもほとんど身動きが取れなくなるのである。

 といって帰郷したところで農作業ができる訳でもないし、一応戦争中でもあるので、我々兵隊は律義に軍務に従事し続けていた。


 大雪が降った直後、マイクロフトの新たな提言を受けて、我が西部防衛軍はイルハンスの教皇庁に使者を送ることになった。

 その目的は、教皇にリジー・フォスターを正統なメシア教徒と認めさせ、その治癒魔法にお墨付きをもらうことである。

 リジーが教皇の後ろ盾を得れば、半神は「悪魔」や「魔女」に限られなくなる。

 正式に「聖女」となったリジーを連れて説得すれば、プライモア公爵は不必要に息子を恐れることをやめて軟禁を解くに違いない。

 これがマイクロフトの狙いだった。


 相手が教皇であるため、クロッカス将軍の右腕であるガルモンド侯爵や、会議で書記を務めている(つまり軍の情報に関して責任を持っている)スクライブ伯爵など、それなりに決定権を持つ将校とその部下が使者を務めることになった。

 だが、一応戦争中ということもあって、西部防衛軍全体から割かれた人数は30人ほどだった。

 当事者であるリジーはもちろんのこと、マイクロフト小隊からはマイクロフト、スタンリー、メアリー、私の4人が、フォッセン小隊からはランギス姉弟が選ばれた。

 メアリーとアニーにはリジーの護衛が期待された。

 スタンリーと私にはおそらく、雑用をこなすことが期待されていたのだろう。


 私たちは教皇と交渉する前に国王や宰相に許しを得るために、王都に寄る必要があった。

 そのため、私たちの旅程はまず王都ウーヘンに行って、そこからイルハンスの教皇庁に行き、全てが順調に行けばその足でプライモア公爵の城に行って、帰路は報告のために再びウーヘンに寄り、ルンデンに戻ってくる、というものになった。


 教皇庁は各国のメシア教の頂点に君臨する教皇の直轄組織であり、その所在地は我が王国の南、教皇領の中心都市イルハンスである。

 イルハンスはメシア教で最も重要な聖地の1つでもある。

 教皇領は我が王国やダームガルス帝国よりも人口・領土共に2、3回り小さいくらいの地域で、その名の通り教皇による直接的な支配を受けていた。


 教皇庁とその下部組織である各地のメシア教会は、我が王国とダームガルスの戦争について中立の立場をとっていた。

 これは、我が王国とダームガルスが共にメシア教を信奉する国家だったからである。

 より正確に言えば、両国は共にメシア教を国教として異教徒を公職から排除していた。

 大司教は我が王国に4人、ダームガルスに3人、教皇領に2人、それ以外の国々に15人いて、彼らは基本的に協力関係にあり、その24人による合議で教皇が選定された。

 我が王国とダームガルスの両王室とそれに従う貴族たちは戦争中だが、大司教に率いられた両国の教会は戦争への参加にも民衆の動員にも消極的だった。


 こういう事情だから、仮にリジーが教皇に聖女と認められたとしても、教皇庁が軍事的にウベルギラスに加勢してくれると安易に期待することはできなかった。

 そのため、リジーを聖女と認定してもらうことが第一であり、教皇領から軍事援助を取りつけることは二の次になった。

 交渉にはいくつかのコツがあるが、求め過ぎないこともその1つという訳だ。

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