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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第6章 ランドン
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6-16

 11月13日、バルヴァン侯爵率いる部隊がゲイルフォースから、我が軍が駐屯するルンデンに向けて出発した、という知らせが届いた。

 あまりにも敵が小規模な上、その多くが騎兵とのことなので(騎兵は一般的に攻城戦には向かない)、マイクロフトやジェンキンスを含む将校の多くが不審に思い、我が軍は籠城して様子を見ることになった。


 この選択は正解だった。


 この日の昼下がり、ルンデン城に雷が落ちた。

 見張りを務めていた兵士によると、向こうの山裾(やますそ)にバルヴァン侯爵の部隊が見えたという。


 いくら曇天(どんてん)とはいえ雨もないところに雷を降らせるのだから、侯爵は偶然に恵まれただけの普通人ではなく、やはり本物の半神だったのだ、と私は思った。


 このとき、剣と槍の部隊である私たちマイクロフト小隊はルンデン城の城壁の上、他部隊の弓兵たちの後ろで待機していた。

 背後が強烈に白く光り、バリバリッという大きな音が轟いて、振り向くと、間もなくもう1発雷が落ちた。

 我が軍の兵士たちはことごとくどよめいた。マイクロフト小隊も例外ではなかった。


 雷はその後、間隔(かんかく)を空けながら、5度にわたってルンデンに落ちた。

 しかし、これらの雷はルンデン城の屋根や城壁を焦がすばかりで、人間には落ちなかった。

 そして、敵部隊はそれ以上ルンデンに接近せず、おとなしく引き上げていった。


 バルヴァン侯爵の目的が、我が軍に対して自らの超能力を誇示することにあったのは明白だ。

 そして、彼(あるいは彼に入れ知恵した誰か)の思惑通り、戦局は膠着(こうちゃく)状態になった。

 季節が秋から冬になって、快晴の日が少なくなっていた。

 空に雲さえあればバルヴァン侯爵が雷を落としてくるという蓋然性(がいぜんせい)が高くなって、我が軍はますますゲイルフォースを攻めづらくなった。


 我が軍の兵士たちは不吉な出来事を目撃して怖気づいていた。

 将校たちは彼らに対して、ルンデンを立て続けに襲った雷はバルヴァン侯爵という敵国の悪魔によるものだと説明した。

「しかし、恐れることはない! 我が軍には彼に対抗しうる英雄として、ニコラス・ハーディングとエリザベス・フォスターの2名がいる!」

 というのが、将校たちの言い分だった。

 だが、残念ながら多くの兵士たちはくだらない噂を交わして互いの不安感を高め合った。

 彼らによると、バルヴァン侯爵の力は悪魔のそれにしてはあまりに偉大なものだ、

 彼は悪魔ではなく預言者なのではないか、

 そうだ、神の代弁者として我がウベルギラス軍に鉄槌(てっつい)を下そうとしているのだ、ということになるらしい。


 率直に言って、私はこのような噂を囁く連中を、臆病なバカ者だと思っていた。

 バルヴァン侯爵の超能力が神に与えられたものなら、ニコラスの身体能力もまた、神に与えられたものでなければおかしい。

 だが、ニコラスよりもその能力にふさわしい人格の持ち主はいくらでもいた。

 たとえば、既に戦死したジョン・クラウドやトーマス・カーターの方が、ニコラスよりもよほど神に近しい人間だった。

 ごく少数の人間が特別な力を持っているからといって、それが神から与えられたものだとか、預言者としての力の発露だとか、そんなことはあり得ない。

 もちろん、仮に私がこう言っても、臆病な連中は、バルヴァン侯爵のド派手な力は神によるもので、ニコラスのささやかな能力は悪魔によるものに違いないと反論しただろう。

 だが、それは確かめようがないことだ。


 マイクロフト小隊の中にも、似たような噂に踊らされる連中はいた。

 そして、そういった噂を退ける者の中にも、ニコラスがバルヴァン侯爵に対抗できるのか疑問を抱く者はいた。

 この点に関しては、正直なところ私も少し不安だった。

 だが、そんな私にエドガーがこう言った。

「ニコラスはランドンを落としたが、バルヴァンはルンデンを落とせなかった。ってことは、そういうことなんじゃねえか?」

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