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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第6章 ランドン
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6-15

 10月19日に雨が降り、私は我が軍が天候に恵まれていたことを神に感謝した。

 ベルネスもバルヴァン侯爵も、敗走から2日しか経っていない状況ではさすがに兵を立て直せないらしく、我が軍に攻撃を仕掛けてはこなかった。


 翌日の10月20日(この日も雨が降っていた)、将校たちが会議を開いて我が軍と敵軍の状況について情報共有を行った。

 それによると、ランドンでの手痛い敗北を受けて、ベルネスが率いていた兵たちは逃亡あるいは戦死し、敵の兵力は4000から2500以下に激減した。

 一方の我が軍には、華々しい勝利によって新規の志願兵たちが加わったので、その兵力は早くも4500を上回るまでになった。


 この好機を逃すまいと、10月22日に我が軍がダームガルス領に進撃すると、翌々日の24日、カロス伯爵ハンス・ゲッティンベルグがベルネスの身柄を差し出してきた。

 さらに、カロスにポラリスとルンデンを加えた3都市が相次いで無条件降伏した。

 無条件降伏の意味するところは、これらの都市がダームガルス王室の支配を離れてウベルギラス王室の庇護下(ひごか)に入るということであり、早い話が鞍替(くらが)えである。

 当時の各国の王と諸侯は精神的・血縁的な主従関係よりも単なる契約関係にあることの方が多く、諸侯は状況に応じてこうした鞍替えをして(はばか)らなかった。

 3都市の支配者たちがこの判断をした理由はもちろん、ニコラスが城壁を跳び越えてしまう以上、当時存在したほとんどあらゆる城壁が意味をなさないことが明らかだったからだ。

 3都市の無条件降伏によって、我が軍はダームガルス帝国の帝都ゲイルフォースへ進軍する足掛かりを得た。


 とはいえ、すぐにゲイルフォースを攻める訳にはいかなかった。

 内部で権力争いを繰り広げていたダームガルスの王室と貴族どもが、我が軍の進出をきっかけとして結束するようになったからだ。


 また、ウベルギラス王国軍の方でも、今後の方針として、ニコラスに城壁を乗り越えさせる戦術は極力使わないことが取り決められた。

 表向きの理由は、ひとりで城壁を駆け上がって敵兵に包囲されたときにニコラスが討ち取られるおそれがあるからだった。

 実際、ニコラスと同じ半神であるモルリークは我がジェンキンス隊の一般兵たちに包囲されて死んだ。

 敵兵に包囲されることは半神にとっても脅威なのだ。

 ランドン攻略の際の活躍で、ニコラスが超常の力を持っていることは王国軍の共通認識になったので、貴重な戦力をマイクロフトの判断だけで危険にさらすことに対してストップが掛かった形だ。


 この会議に出席していたエドガー、パーシヴァル、私の3人は、能天気にも将校たちの言い分を鵜呑みにしてしまったが、会議が終わった後でスタンリーが裏の意図を教えてくれた。

 それによると、ダームガルスとの戦争に勝つにしても、ニコラスにばかり頼った勝ち方をするとマイクロフトの手柄が大きくなりすぎるという点を、将校たちは懸念しているのだという。

 当時の将校たちは愛国心や王室への忠誠心ではなく金儲(かねもう)けと出世のために戦争に参加しているというのが実情だったので、彼らとしては、ニコラスやマイクロフトばかりが注目を浴びるのは面白くなかったのである。


 我が王国軍の将校たちの見込みでは、ゲイルフォース陥落を目前にして、ダームガルスの貴族どもはウベルギラス側に寝返ることを検討しているから、こちらから彼らを受け入れる姿勢を見せれば裏切りを誘発できるはずだった。

 将校たちはそれぞれの外交ルートを使ってダームガルスの貴族どもと交渉を始めた。

 だが、事はそう上手く運ばなかった。

 その理由はおそらく、モルリークを倒されたにしても、ダームガルス帝国にはまだ3人の半神が健在だったからだろう。

 それに対して、我がウベルギラス王国軍が擁する半神はニコラスとリジーの2人だけだ(しかも、私が思うに、ダームガルスの貴族どもがリジーの存在を把握していたのかは怪しい)。

 総力戦になることを想定して単純に半神の数を比較した場合、ダームガルスの方が優勢だと考えられた。

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