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「ランドンを落とせば我が軍がダームガルスに対して打って出やすくなります。
しかし、ランドンを無視して敵地に踏み込めば、我が軍は常に敵軍から挟み撃ちされる危険に晒されます。
これではこの戦争に勝利できません。
勝利の機会を多少先延ばしにしてでも、まずはランドンを落とすべきです。
そして、今の我が西部防衛軍には、ランドンを包囲するだけの兵力は揃っていません。
何事も完璧な解決を得ることはできない以上、今回はベルネスとローラスの身柄の確保よりも、ランドンという拠点の制圧を優先して良いと思います」
――何事も完璧な解決を得ることはできない。
あまりにも唐突に出てきたので、それが元々はリジーの言葉だと思い出すのに少し時間が掛かった。
「なるべくなら、敵軍がベルネスを大将に掲げている内に、できる限りの痛手を与えておきたいのだが……」
クロッカス将軍が食い下がったが、ジェンキンスも引っ込まなかった。
「その痛手がランドンです。
どちらにせよ、ベルネスは第4王子ではありますが、敵国王室の中では凡庸な男で、さほど重要な人物ではないと聞いています。
懸賞金をかけておけば、我が軍がランドンを陥落した際に裏切りを誘発できます。
その程度の配慮で充分でしょう。
敵が危機だと判断し、この戦争の勝利に固執すれば、エルロイドの軍勢が出てくることは必至であり、これは時間の問題です。
ベルネスの身柄にこだわって包囲戦を展開し、この地で我が軍が敗北するようなことになれば、本末転倒です」
「うむ、分かった。各々方、異論はありませんか?」
他の将校たちも文句をつけなかった。
だが、静かになった議場で、マイクロフトが挙手した。
ジェンキンスが驚いた様子を見せず、むしろ得意気に笑みを浮かべたところを見ると、どうやらこの演出は彼も承認済みのものらしい。
「将軍閣下、ジェンキンス殿下、作戦の基本はそれで構いませんが、私にちょっとした考えがあります。
他の部隊の作戦行動に変更を要求するものではありませんが、上手くいけばこれ以上ない成果を上げられるはずです。
敵を驚かせるために可能な限り秘密にしておきたいので、その内容は別の機会に改めてお伝えします」




