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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第6章 ランドン
74/146

6-7

「ランドンを落とせば我が軍がダームガルスに対して打って出やすくなります。

 しかし、ランドンを無視して敵地に踏み込めば、我が軍は常に敵軍から挟み撃ちされる危険に晒されます。

 これではこの戦争に勝利できません。

 勝利の機会を多少先延ばしにしてでも、まずはランドンを落とすべきです。

 そして、今の我が西部防衛軍には、ランドンを包囲するだけの兵力は(そろ)っていません。

 何事も完璧な解決を得ることはできない以上、今回はベルネスとローラスの身柄の確保よりも、ランドンという拠点の制圧を優先して良いと思います」


 ――何事も完璧な解決を得ることはできない。

 あまりにも唐突に出てきたので、それが元々はリジーの言葉だと思い出すのに少し時間が掛かった。


「なるべくなら、敵軍がベルネスを大将に(かか)げている内に、できる限りの痛手を与えておきたいのだが……」

 クロッカス将軍が食い下がったが、ジェンキンスも引っ込まなかった。


「その痛手がランドンです。

 どちらにせよ、ベルネスは第4王子ではありますが、敵国王室の中では凡庸な男で、さほど重要な人物ではないと聞いています。

 懸賞金をかけておけば、我が軍がランドンを陥落した際に裏切りを誘発できます。

 その程度の配慮で充分でしょう。

 敵が危機だと判断し、この戦争の勝利に固執すれば、エルロイドの軍勢が出てくることは必至であり、これは時間の問題です。

 ベルネスの身柄にこだわって包囲戦を展開し、この地で我が軍が敗北するようなことになれば、本末転倒です」


「うむ、分かった。各々方、異論はありませんか?」

 他の将校たちも文句をつけなかった。

 だが、静かになった議場で、マイクロフトが挙手した。

 ジェンキンスが驚いた様子を見せず、むしろ得意気に笑みを浮かべたところを見ると、どうやらこの演出は彼も承認済みのものらしい。


「将軍閣下、ジェンキンス殿下、作戦の基本はそれで構いませんが、私にちょっとした考えがあります。

 他の部隊の作戦行動に変更を要求するものではありませんが、上手くいけばこれ以上ない成果を上げられるはずです。

 敵を驚かせるために可能な限り秘密にしておきたいので、その内容は別の機会に改めてお伝えします」

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