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私たちがマイクロフトを訪ねたとき、彼のテントの前にはスタンリーが立っていた。
「いらっしゃると思っていましたよ」
スタンリーは前日の作戦通達の際に演習場にいたので、メアリー、ニコラス、私など一部の隊士が今回の作戦を快く思っていないことを知っていた。
「小隊長は今、ニコラスにつきっきりで手が離せませんが、アドラー嬢に対しては伝言を預かっています。
『今回の作戦の目的は敵軍への支援を少しでも減らすことでしたから、アドラー嬢が仰ったように、民間人を不必要に殺傷することは避けるべきでした。
それなのに、隊士たちにそう伝えることを怠り、まるで本物の盗賊のような乱暴な略奪行為を誘発してしまったのは私の責任です。
明朝、小隊が集合したときに、民間人に対する無用な乱暴を避けるように隊士たちに通達しますので、この件に関してはどうかご容赦ください』、
とのことです」
「伝言、承りました。小隊長がそう仰ったなら、今の時点でわたくしからそれ以上を望むことはできません。ところで、小隊長がハーディングさんにつきっきりというのはどういうことですの?」
「今回の作戦中にニコラスが小隊長に腹を立てたので、それを宥めているんです」
「なるほど。わたくしがここに抗議に来ることを小隊長が予想して伝言まで用意していたのは、そういう訳でしたのね」
メアリーと私はそれで引き上げた。
別に期待していなかったが、メアリーは私にパンを買ってくれた。
おかげで、ひもじい思いで一晩を過ごさずに済んだ。
マイクロフトはメアリーへの伝言の内容を守った。
これによって、マイクロフト小隊による表立った残虐行為は減った。
それに、小隊長が後ろ盾になってくれたおかげで、メアリーや私など、略奪を牽制する立場の人間が動きやすくなった。
だが、マイクロフトやメアリーなどの目が届かないところでは、変わらず不必要に民間人が殺傷されていた。
また、王国軍全体で見れば、民間人相手だからといって容赦しない方が多数派だったので、なぜ自分たちだけが手心を加えなければならないのかと、不満を口にする連中もいた。




