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半神に関するマイクロフトの一連の提言がきっかけで、我々西部防衛軍は王都とプライモア公爵家へ緊急の使者を送ることになった。
そのメンバーにはスタンリーが含まれていた。
スタンリーが王都に出立したのは生憎と雨の日だったが、道がぬかるんでも馬に乗るから徒歩よりは楽だろうとのことだった。
スタンリーがいない間はエドガー、パーシヴァル、私の3人が他の小間使いたちに混じってマイクロフトの身の回りの世話をすることになり、結果的に教練に参加する時間が減った。
私は得をした気分だった。
1週間ばかり経ってスタンリーは無事に帰ってきたが、成果は芳しくなかった。
どうやらプライモア公爵ガイウスがリヴィウスの超能力を嫌っているらしく、リヴィウスは軟禁状態にあるとのことだった。
このことは王侯貴族の間では広く知られていたらしく、スタンリーの報告を聞いたマイクロフトは「噂通りだな」と呟いた。
「半神のこともこっちの状況も伝えたんだけど、やっぱり動いてくれなかった」
いくら親しいと言っても身分の差があるのだから、普通は主君の子女に対して乳母の子女が畏まった口調になるものらしいが、マイクロフトとスタンリーの場合はあまりその辺のことを気にしていないようだった。
マイクロフトも気心の知れた様子で答えた。
「実際、まだ我が軍が苦境に立たされている訳ではないからな。教会はどうだった?」
「得体の知れない力に頼るのは嫌だと言ってる」
マイクロフトが腕組みして唸った。
そのまましばらく口を開きそうになかったので、私はスタンリーに質問した。
「なんで教会の話が出てくるんだ?」
「プライモア公爵は頑固な人でね、クロッカス将軍や国王陛下の言う事でもほいほいとは聞いてくれない。でも、熱心なメシア教徒として有名なんだ。だから、教会に説得してもらえればご子息を解放してくれると思ったんだけど、教会が応じてくれなかった」
「教会は半神のこと知らないのか?」
「建前上、教会は半神の研究をタブー視してるけど、そうは言ってもバルディッシュみたいな学者の総本山だからね、この世に半神が存在することは知ってるはずだ。でも、教会の教えでは奇蹟を起こせるのは神と天使と救世主だけってことになってる。それに、かつて教会の人間が奇蹟を起こしたという話は聞かない。教会にとって半神の存在は目障りなんだろうさ」
「それじゃ、ニコラスとリジーのことは?」
教会からしてみれば、存在が教えに反する訳だから、あの2人は悪魔ということになるのだろうか。
悪魔はモルリークだけで充分ではないのか。
「そのことなんだけど」
スタンリーはマイクロフトの方を見た。
「俺たちが報告する前に、教会はニコラスのことを知っていた。ただ、飛び抜けて強い戦士というくらいの認識で、半神と疑っているふうでもなかった。それに、あいつの人柄すら知らないようで、敬虔な信徒なのかと訊いてきた。とりあえず、みんながドン引きするくらい敬虔な人間だと答えておいたよ」
スタンリーと顔を見合わせて不敵な笑みを交わしてから、マイクロフトが尋ねた。
「リジーについてはどうだった?」
「ちょっと前まで国王陛下が大々的に指名手配してたから、噂は国中に広まってるみたいだ。不思議な力で病気やケガを治す女の子が王国軍に入隊したらしいって。教会も『腕の良い医者がいらっしゃるそうで』って言ってきたから、多少の興味はあるんだろう」
「何て答えた?」
「『どんなケガでも瞬く間に治してしまうので、我々も重宝しております』って言ったら、引っ込んだ」
「ふむ。前にも言ったが、リジーのことはまだ公けにしたくない。教会に変な茶々を入れられたら、せっかく手に入った逸材を失うことになりかねんからな」




