5-7
「順に訊かせていただきます。奇蹟の力が血統によるとはどういうことですか?」
「多神教の時代から現在に至るまで、超能力者を神あるいは神々と関連させようとする者は多い――貴公が先ほど口にした『半神』という呼称もそういった精神によるものだな――。そして、古来より王侯貴族というものは、自分たちの血統は神あるいは神々にゆかりがあると考えたがる。それだけの話だ」
「つまり、奇蹟は血統によるものであり、貴族……特に王家の血を引く者たちには半神の血が入っているから、彼らも奇蹟を起こせる、と?」
マイクロフトは真剣な顔だったが、バルディッシュは鼻で笑った。
「貴公もバカバカしいと思うだろう? そんな訳がないことは明らかだ」
「しかし、現にプライモア公爵のご子息は半神だそうですが……?」
マイクロフトの言葉で、私は先日の戦闘の前に会議で耳にした「プライモアの悪魔」という言葉を思い出した。
――なるほど、あの将校はモルリークが「バルディベルグの悪魔」だと聞いたとき「もしかして『プライモアの悪魔』の同類か」と口にして、別の将校に「不敬だぞ」と窘められていた訳か――。
「お言葉を返すようだが、カストバーグ卿、ここにいるニコラスとエリザベスは王侯の血を引いているのかね?」
「……いえ、私の知る限り、そんなことはないと思います」
「そうだろう。血の濃さがものを言うのであれば、超能力者の家系はみな超能力者になるはずだし、彼らの主張に従えば、歴代の国王はみな超能力者であったはずだ。そして、庶民の間から超能力者が生まれることはあり得ない。だが、現実はそうなっていない。プライモア公爵家に超能力者が生まれたことは偶然にすぎん」
「では、半神は何に由来すると、ドクターはお考えですか?」
バルディッシュはマイクロフトを品定めするような目で鼻先をいじってから、面白くもなさそうに盃に酒を注いだ。
何を不機嫌になっているのだろう、と私は思った。
「信仰心に基づくと、教会は考えているようだ」
そう言って、バルディッシュは酒をあおった。
いかにも何か言葉を続けたそうな態度だったので、私たちは誰も口を挟まなかった。
案の定、バルディッシュは再び口を開いた。
「だが、異教徒にも超能力者は存在していたし、メシア教の軍勢が彼らに苦しめられたと、公式の歴史書にも書いてある。反証はいくらでもあるのだ。私の考えでは、超能力はもっと別のもの――万物の根源とでも言うべきものに由来する」
「万物の根源?」
「学者連中の間でもあまり知られていないが、古代の学者たちは万物の根源について思索を巡らせたそうだ。
その中に、エンペドクレスという人がいて、彼は万物の根源を火・空気(風)・土・水の4元素だと述べた。
当然ながら彼は異教徒ではあるが、この説は実に多くのことを上手く説明してくれる。
超能力者についてもそうだ。
超能力者はいくつかの属性に分けられるが、それらはエンペドクレスが列挙した4元素に対応している。
このことから、超能力は万物の根源に、すなわち4元素に起源を持つと考えることができる」
取り澄ました様子を装ってはいたが、さすがのマイクロフトも困惑したように見えた。
「超能力が万物の根源に由来するとなると、どういうことが起こるのですか?」
マイクロフトが質問を絞り出した。バルディッシュは言った。
「早い話が、超能力者はこの世界のどこからでも、ランダムに現れるということだ。血筋も信仰心も関係ない。もっとも、これは私の説にすぎんし、私はこの説を提唱したせいで異端者として王立図書館から追放されたのだがね」
「ランダムということは、まったくの偶然ですか……」
「そうだ」
バルディッシュの返事に、マイクロフトはため息をついた。




