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9月12日、私が宿営地のテントの前で、新しく同じ班になった面々と朝食をとっていると、スタンリーがいつも以上にぼさぼさの頭を掻きながら挨拶をして、半分寝ているような顔で私の隣に腰を下ろした。
「ジャコブ、今日1日、俺にくれよ」
私はスタンリーの仕事を手伝ったり語学を教わったりする都合で、エドガー、パーシヴァルと共に教練を抜けることが時々あった。
今回もきっとそういう類のことだろうと思い、私は気軽に頷いた。
スタンリーは自前の青野菜ジュースを一気飲みして苦い顔をした。
彼は別に好きな訳でもなさそうなのに、健康のため毎朝一番にこのジュースを飲んでいた。
寿命をちょっと延ばすために不味い物を飲むなんて、私ならお断りだ。
どうせ明日には死ぬかもしれないんだし。
朝食を済ませたスタンリーは、ニコラスを訪ねると言い出した。
「ニコラス? あいつに何の用があるんだ?」
「今日、俺たちはバルディッシュの所に行くんだが、あいつにも同行してもらう」
「三日月斧? そんなもんが不足してんのか?」
「いや、バルディッシュという名前の男なんだ。ここから3時間ほど歩いたストラスガードという町の端にいる」
名前を聞いても私には何も思い当たらなかった。
「徒歩で3時間って言ったら、割と近場だな」
私は半分冗談のつもりだったが、スタンリーは真面目な顔で頷いた。
「バルディッシュがここまで近くに居てくれて幸いだった。たぶん俺たちやこの戦争のことが気になって、彼なりに監視していたんだろう。良くも悪くも好奇心の強い人らしいからな」
「そいつ、強いんか?」
「いや、殺す訳じゃないよ。……今日のところはね」
実際にやったことはなかったが、特別な外出と聞いて誰かの暗殺を連想したからと言って、誰も当時の私のことを責められないだろう。
スタンリーもそのことでことさらに私をからかわなかった。
殺しじゃないとなると、ニコラスと私はスタンリーの護衛ということになるだろうか。




