55/146
4-11
今回の戦闘を乗り切った私にとって目下の心配事だったのは、うかうかしている間にモルリークがケガを治してまた私たちのところにやってくるのではないかということだった。
短剣で頭を刺されたのだから、腕の切り傷を治すよりは治癒に時間が掛かるはずだが、何日も要するという訳でもあるまい。
モルリークという嵐にはすさまじいものがあり、推定では奴の手にかかった王国軍の死傷者は40人を下らない上に、精鋭揃いで通っているマイクロフト小隊も少なくとも8人が殺され、11人(メアリーを含む)が負傷した。
1人の男によるものとしては尋常な被害ではない。
まさに悪魔だ。
私はさほど親しくなかったが、モルリークに殺された隊士の中にはかつてメアリーと決闘騒ぎを起こしたジーベルもいた。
卑猥な冗談が好きなお調子者でメアリーを怒らせた彼だったが、小隊のムードメーカーのひとりだったので、彼の死を悼む隊士は少なくなかった。
目撃者がいなかったのでモルリークにやられたのかは定かでないが、今回の戦闘では、アナンとコリンも戦死した。
ヴォルフガングは兄貴分を守れなかったことをひどく悔やんだ。
彼の嘆く姿を見る私たちもつらい気持ちになった。
戦いの翌日、ヴォルフガングは除隊して、アナンの遺体と一緒に2人の故郷に帰っていった。




