4-2
ランドンはダームガルス帝国の辺境に位置するが、国境防衛の要となる城塞都市で、街は高さ8メートルもの厚い壁に隙間なく囲まれていた。
平時には我が王国との交易の要衝であり、数万人規模の人口を抱える大都市だった。
西へ西へと行軍した我が軍は、ランドンの北東に位置するアーガル山の麓、ガースという地に宿営地を設置した。
戦いが間近に迫るにつれて、将校たちの会議がより頻繁に開かれるようになり、エドガー、パーシヴァル、私の3人はよく分からないまま会議に出席させられた。
こうなってくると、呑気に模擬戦をしている雰囲気ではなくなってきそうなものだが、実際には、私たちにそんな繊細な緊張感はなかった。
気になるのは事実だが、あまり気にしすぎても仕方がないと思っていた。
「ランドンって何で有名か知ってる?」
戦闘が始まる2、3日前に、アニーがそんなことを私たちに問いかけた。
ぼちぼち涼しくなってきた秋の昼下がり、私たちは模擬戦の合間の休憩で水を飲みすぎて、模擬戦の再開を渋っていた。
「たしか、陶器じゃなかったか?」
どこでそんなことを知ったのか当時の私には定かではなかったが、アナンが答えた。
今になって思えば、伯爵家や騎士の家の教育によって叩き込まれた知識のひとつに違いなかった。
「そう。ランドンには良い陶器職人が集まってる。でも、ランドンで良い陶器が作られるようになったのは、交易のために茶葉が集められて、お茶を飲む文化が広まったからなんだよね」
アニーは呆けた顔で頬杖をついて快晴の空を見上げながら、そう言った。
「……それがどうかしたのか?」
待ちきれなくなって私が尋ねると、アニーはちらりと私の方を見てから、のんびりと答えた。
「別に大したことじゃないんだけどさ。戦いになったら、ランドンの陶器と茶葉はどさくさに紛れて、割られたり燃やされたりするんだろうなって思ってさ。なんか、もったいない気がするんだよね。売る所で売れば高く売れるのにさ」




