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私たちがマイクロフト小隊の連中を探し当てたとき、彼ら彼女らは城の食堂で思い思いに飯を食っていた。
マイクロフトが進み出て、
「みんな、聴いてくれ! 2日後、ランドンへ向けて出発する! 各々、準備しておくように!」
と手短に告げた。
突然の通達にもかかわらず、我らが小隊の連中は素直に聞き入れて食事に戻った。
マイクロフトはそれに満足した様子だった。
私も食事をすることにした。
特に別行動をする理由もなかったので、私はそのままスタンリーとしゃべりながら、補給班の兵士から豆のスープを受け取った
(エドガーは他の隊士に呼ばれて行き、パーシヴァルは手洗いに立った)。
スタンリーと私が席に着くと、メアリーと、彼女に引っ張られるようにしてリジーが、私たちのところにやってきた。
「エバンズさん、次の戦いで王国軍がどんな手を打つのか、お聞きしてもよろしいかしら?」
そういうことはスタンリーよりもマイクロフトに訊いた方が良いんではないかと私は思ったが、さっきまでそこにいたはずのマイクロフトを探しても見当たらなかった。いつの間に消えたのだろう。
「将軍は城を攻めるつもりでいます」
実力が全てのマイクロフト小隊ではみんな身分の違いをあまり考えずにタメ口を利き合っており、特に没落貴族と言っても王家の血筋であるスタンリーは、小隊の貴族連中にも気楽な口調で話すことが多かった。
だが、メアリーに対しては、マイクロフトに倣ったのか、畏まった口調や婉曲的な表現で敬意を表していた。
「もちろん、勝算があってのことですわね?」
メアリーはすっかり軍人のメンタリティに染まっているのか、戦が近いと聞いて張り切っているようだった。
だが、彼女の横に立つリジーはむしろ気分が落ち込んでいる様子だった。
「そうですね。詳しいことは機密事項ですが、我々がやることは前回と変わらないと思っていただいて結構ですよ」
と、スタンリーが言った。
「諸々のお膳立ては別の部隊にやってもらう手はずになっています」
「望むところだ。何も考えなくて済むのがいちばんだ」
私たちの話を聞きにきたナヌラークが横槍を入れた。
彼がわざわざそんなことを言うのは、最前線で戦うことの危うさを熟知しているからだろう。
いつ何のきっかけで死ぬか分からないからこそ、シンプルに何も考えずに目の前の状況に対処すれば良いという状況を、彼は求めていたに違いないのだ。
「ところで、3人とも、ニコラスを見かけなかったか?」
スタンリーの問いに、メアリー、リジー、ナヌラークの3人が辺りを見回すと、ちょうど食堂を後にしようとするニコラスの背中が見つかった。
「おーい、ニコラス!」
スタンリーがニコラスを呼んで、手招きした。
ニコラスは体力が有り余っているくせに、これでもかというくらい大儀そうな様子で、しかし、スタンリーの言葉を無視することはできないらしく、こちらにやってきた。




