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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第3章 ドゥオーク
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3-7

 私たちは約2ヶ月もドゥオークに滞在していた。

 戦史の中ではたった2ヶ月だが、それでも夏が過ぎ去るのに充分な期間には違いなかった。

 後に知ったところでは、これは我が軍が補給路を整えたり、ドゥオークの親ダームガルス派を処分したりするのに必要な期間だったそうだ。

 その間に、リジーは小隊の憧れの的(マドンナ)になり、メアリーの戦い方は軍人らしく荒っぽくなり、私もすっかり小隊の「古参」に馴染んだ。

 ニコラスとも何度も模擬戦をして、奴の速度に目が慣れ始めていた。

 といっても、見えることと反応できることは別問題だが。


 この期間で私にとって最も大きな出来事だったのは、スタンリーによる語学講座が始まったことだ。

 講座は城の大きな会議室やスタンリーを始めとしたマイクロフトの部下たち共用の部屋で開かれた。

 この語学講座では、平民出身の先輩隊士エドガー・リックマンと、同じく平民出身で私の同期パーシヴァル・ブライスも一緒だった。

 私はそれまで彼らとはあいさつ以上の言葉を交わしたことがなかったが、どうやらスタンリーからすると私たちには何かしらの共通点があったらしい。

 当時、商人や一部の農民などが使う文字こそ口語だったが、ここで問題になったのは文語、すなわち神聖語(聖書に記された古語)と、敵国の言葉であるダームガルス語だった。

 神聖語は各国の王侯貴族の共通語であり、当時の政治・軍事・学問(主に神学)に関わることは専ら神聖語で記されていた

(といっても貴族は領民・使用人・奴隷などと話す都合上、自分の領地の言葉にもそれなりに通じていることが多かった)。

 なお、当時はウベルギラス語やダームガルス語は神聖語から派生した雑多な話し言葉の総称であり、書き言葉としてのそれらは(少なくとも公式には)存在していなかったので、スタンリーも私たちにそういうものは教えなかった。

 語学は当時の無学な私にとっては難しかったが、幸いにして神聖語はもちろんダームガルス語の方も、基本的な単語や文法がウベルギラスの口語とよく似ていた。

「神聖語」は中世ヨーロッパのラテン語に着想を得ています。

 作中世界には神聖語よりも古い言語として古代語も存在しており、こちらは現実のヘブライ語に当たります。

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