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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第3章 ドゥオーク
40/146

3-6

 あるとき、リジーについて悪い噂が立ったことがあった。

 彼女を貶める根も葉もない噂の内容をここで無闇に反復したくはないが、端的に言うと、それは彼女が裏では性に奔放(ほんぽう)だというものだった。

 当時の女性にとってはそういう噂が立つだけで大問題だった。

 リジーをよく知るほとんどの新参たちは噂を()に受けなかったが、一部の古参の間では面白おかしく語られた。


 このとき、リジーは事情を知ってか知らずか普段と変わらない様子だったが、彼女のファンは激しく心を痛めた。

 私は現場に居合わせなかったので人から聞いた話になるが、ある夜、ニコラスが好事家(こうずか)の隊士たちのところにやってきて、言葉も少なく彼らを殴りつけた。

 騒ぎを聞いて駆けつけたマイクロフトがニコラスをなだめて、死人が出る前にその場は収まったが、隊士2名がそれぞれ(あご)と腰の骨を折る重傷で、他にも何人かがケガをした。

 マイクロフトがすぐにリジーに治療させたので、幸いにして、誰もこのときの傷を引きずらずに済んだ。

 彼女の治療を受けた隊士たちがその後、少なくとも公然とはリジーを批判しなくなったのは言わずもがなだ。

 彼らが自らの非を認めたので、ニコラスもお(とが)めなしだったが、リジーは詳しい事情を聞かされなかったせいで、皮肉なことに、ケガ人たちには優しかったが、ニコラスに対してはお冠だった。


 リジーを前にしたニコラスは、私たちに対するときに比べると、軽口を叩いたり笑みを見せたりすることが多かった。

 どうやらニコラスはリジーに特別な親愛の情を抱いているようで、今回の場合のようにリジーがニコラスのことで不機嫌になると、目に見えて狼狽することさえあった。

 一方のリジーはニコラスをそういう目で見ることはないらしく、むしろ彼を友人の中でも世話の焼ける存在だと思っていたようだ。


 マイクロフトとしては、リジーの治癒魔法のことはなるべく秘密にしたかったようだ。

 大事(おおごと)になるとリジーが面倒なことになると危惧したのか、それとも噂を知った上官に彼女を取られたくないという意図があったのか、それは分からない。

 だが、ニコラスが起こした騒動によって、それはいわゆる「公然の秘密」となった。

 つまり、建前では秘密になっているが、陰では皆が噂し合っていたということだ。

 当然、その噂は小隊の外にもじわじわと広がっていった。

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