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新参隊士は古参とは別の教練を受け、模擬戦も別々に行われるので、私がリジーに話しかけるチャンスは夜だけだった。
だが、メアリーが入隊したときもそうだったが、夜になるとリジーの周りには人だかりができたので、彼女に話しかけるのはためらわれた。
マイクロフト小隊の中には、いつの間にかリジー派とメアリー派という2つの派閥が生まれた。
派閥と言っても別にいがみ合う訳ではないのだが、「あんな我が強い女 (メアリー)が好きだなんて、嫁さんができたら絶対尻に敷かれるタイプだ」とか、「手前の方こそ分かってねえよ、ああいう女 (リジー)こそ意外と男をたらしこむものなんだ」とか、当人たちに聞こえないところで、好き勝手なことを言い合っていた。
当人2人はいたって普通に仲良く付き合っていた。
最初に会った夜の様子から、2人の相性はあまり良くないものと私は思っていたが、どうやら杞憂だったらしい。
こうなると気になってくるのが、リジーとメアリーはどちらがより強いのかということだ。
リジーは新参との教練を楽しんでいるようで、古参の教練に参加するのをのらりくらりと断っていた。
メアリーの方も、ことさらリジーと腕試しをしたいとは思わないようだった(彼女はむしろ打倒ニコラスに燃えていた)。
2人の模擬戦が実現したのは、私を含む周りの要望によるものだった。
だが、結果は期待したものとは違っていた。私たちはてっきり激しい打ち合いになるかと思ったのだが、メアリーの猛攻に対して、リジーはひらり、はらりと避けるだけだった。
全ての攻撃を避けられるだけリジーの方が上手なのかと思いきや、リジーが繰り出した攻撃もまたことごとくメアリーによって凌がれた。
結局、彼女たちの模擬戦は決着がつかないままお開きになった。
そんな具合にリジーの実力は明らかだったが、それでも対戦相手が手加減しているだけだと思いたがる連中はいるもので、何人かの新参隊士がリジーに模擬戦を挑んだ。
リジーがその強さを疑われたのは、彼女が幼い少年のように華奢な体つきだったからだろう。
リジーは嫌そうな顔もせずに受けて立った。案の定、疑り深い連中はあっという間に蹴散らされた。
リジーは勝負を挑まれたら容赦なく力の差を見せつけた。
それは彼女なりの誠意だったのかもしれないが、一部の連中――男たるものは「男の領分」とされるあらゆることで女に勝っていなければならないと考えるような連中――への対応としてはむしろ逆効果だった。




