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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第3章 ドゥオーク
36/146

3-2

 今回の模擬戦もニコラスが担当した。

「勝者には小隊長としての権限を譲り渡す」と宣言している以上、生半可な実力の隊士には任せられなかったのだろう。

 前回と同様に、ニコラスの剣術によって新参たちは次々とあしらわれていった。

 私たちのときは男たちがメアリーよりも先にニコラスに挑戦しようと躍起(やっき)になったが、今回はそういう気の回し合いは起こらなかった。

 おそらく、リジーの見た目が少年のようで、一見しただけでは女だと分からなかったせいだろう。


 槍を持参したリジーが進み出たとき、ニコラスが改めて首をゴリッと鳴らした。

 対するリジーも、珍しく緊張感のある引き締まった表情だった。

 試合開始の合図を前に、リジーだけでなくニコラスが構えをとると、場がどよめいた。


 合図と同時にニコラスが飛び掛かった。

 リジーは眉間にしわを寄せて、槍を振った。

 ニコラスの剣をリジーの槍が弾いた。

 これだけでも相当の腕力が必要だったはずだ。

 と思ったら、ニコラスは次の攻撃を繰り出していた。

 リジーの槍はそれをも弾いた。

 ニコラスがそのまま距離を詰め、リジーの顔面に蹴りを入れた。

 あまりの早業に私の倫理観が追いつかない内に、リジーはニコラスの足を避けて槍で反撃していた。

 さすがのニコラスもこれで終わりかとおそらく誰もが思っただろうが、奴は曲芸のような動きで何とか回避を成功させた。


 私は模擬戦の前からリジーの実力に根拠のない信頼を寄せていたが、実際の彼女は期待以上だった。

 彼女は槍の勢いを殺さず、流れるように次の攻撃につなげた。

 また、彼女の四肢はそれぞれが独立した別の生き物であるかのように動き、なおかつ調和がとれていた。

 端的に言って、彼女の戦いぶりは美しかった。

 彼女にはニコラスほどパワーやスピードがあるようには見えなかったが、まるで先のことが把握できているかのように対応がいつも適切だった。

 きっと彼女はニコラスの戦い方を知り尽くしていたのだろう。

 とはいえ、八百長を疑うような速度ではなかった。

 2人の対戦は他の誰の模擬戦よりも激しかった。

 あまりの光景に、見物する私たちは声もなかった。


 距離をとって睨み合う時間を何度か挟みながら、10分余りが経った。


 斬りつけると見せかけてニコラスがリジーの足を払いにいき、彼女が跳んでそれをかわし、彼女が空中にいる状態のまま剣と槍がぶつかり、槍が折れた。

 折れた槍の柄がニコラスの顔面を直撃したとき、私たちは息を呑んだ。

 2人も動きを止めた。


 そのタイミングで、マイクロフトが割って入った。

「2人とも、素晴らしい戦いぶりだ。こんなに優れた槍遣いが入隊してくれて、私は嬉しい。しかし、今は歓迎試合の最中だ。残念ではあるが、この場は時間切れということにして、次の試合に移らせていただきたい」


 見物していた隊士たちは新参・古参に関係なく、ニコラスに対してここまで善戦したリジーに拍手を送った。

 それほど2人の戦いぶりは見事だった。

 リジーは戦闘モードから普段の彼女に戻って、照れくさそうに手を挙げてそれに応じた。

 裏設定じみたことを解説すると、リジーは棒術を得意としています。旅人姿のときに持っていた長い杖は護身用のものです。ここでは、傷がすぐに治る体質のニコラスが相手ということもあり、町の武器商で買った槍を持参しています。

 リジーはメアリーとは別の武術を学びましたが、リジーがニコラスを手こずらせているのは、2人共通の師匠であるブレインシュタットの元で学んだときに、散々模擬戦をして、彼の速度や動きを熟知するに至ったからです。また、リジーも傷がすぐに治る体質なので、普通の人間よりも刃物を怖がらず、真剣勝負でも動きに迷いやためらいがありません。そのことも彼女の強さの秘密です。

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