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馬に跨ったマイクロフトが小隊の前に進み出た。
敵軍が近づいてくる音がしていた。
「諸君、戦いのときが来た! 君たちが負け犬でないことを、今こそ主と人々に対して知らしめるときが来たのだ! 今こそ、その時だ!」
文の区切れごとに周りの隊士たちと一緒に大声を出していると、どうにでもなれという気になって、力が湧いてくるのを感じた。
最後にマイクロフトが言った。
「主も人々も、今この時の君たちを見ている! 恥ずかしくない戦を、主と人間の歴史に捧げよう!」
ニコラスがいつものようにゴリッと首を鳴らすのを、私は目の端で捉えた。
「盾、構え!」
マイクロフトの号令がかかり、2列目にいた私は盾を頭上に掲げた。
敵からの矢の雨を警戒するためだ。
最前列の者は正面に盾を構えたので、ほとんど足元しか見えなくなった。
両軍から矢が飛び始めた。
槍はせいぜい50メートルほどしか飛ばないが、矢は数百メートル先から飛んでくる。
私の盾にも2、3本の矢が刺さった。
大声と足音で地を揺らしながら、敵の軍勢が近づいてきた。
「前進!」
騎兵隊を先頭に、私たち王国軍は斜面を駆け下り、敵軍と互いに距離を縮めた。
王国軍が雄叫びを上げると、余計な音はすぐにかき消された。
雨のように降る矢と槍を凌いだ私たちは頭上に掲げていた盾を下ろし、走るペースを上げて、敵軍に向けて槍を構えた。
敵の騎兵隊と歩兵が、我が軍に負けじと怒号を上げながら押し寄せてきた。
普段からナヌラークの怒鳴り声を聞かされていなかったら、思わず怯んでいたところかもしれない。
私は古参隊士の肩越しに敵の歩兵を突いた。
悲鳴と血の匂いが私の耳と鼻に襲いかかった。
軍隊の戦を見たことがなかった私はてっきり、統率の取れた軍隊の正面衝突は最前線同士が互いを切り崩して、前がやられれば2列目、3列目、さらにその後ろへと順に代わっていくものだと思い込んでいた。
だが、当然ながらそんな品の良いものではなかった。
10分と経たない内に、陣形や配置はどこへやら、敵と味方が入り乱れた。
それぞれの顔を見ている余裕はないので、見慣れない甲冑であれば斬りかかり、見慣れた甲冑であれば助けに向かうという具合になっていた。
ニコラス、ナヌラーク、バートンを筆頭に古参の隊士たちが飛び出して、敵兵を薙ぎ払った。
ニコラスが剣を振るうと、面白いように敵軍が砕けた。
この男の背中がこんなに頼もしく思えたのは初めてだった。




