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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第1章 ノーリンドン
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1-20

 メアリーの素性や入隊した経緯については不思議に思う者が多かったが、本人がしゃべろうとせず、また、初日の刃傷沙汰(にんじょうざた)で「強くて怖い女」というイメージがついたので、強いて尋ねる者はいなかった。

 彼女は言葉遣いや食事の仕方などのちょっとした仕草を除けば男勝りな性格で、気高く激情的だった。

 男に触られたり卑猥な冗談を言われたりすることを嫌がり、そのことでジーベルという新参隊士に決闘を持ちかけたことがあった。

 ジーベルは「ここで退いたら男が廃る」と受けて立とうとしたが、決闘になれば彼女が勝つことは明らかだったので、別の新参隊士が仲裁に入り、騒ぎはその場で収まった。

 傍から見ていた私は、今となっては恥ずかしい話だが、姉の一件があったにもかかわらず、「これだから女は面倒なんだ」と愚痴るトーマスに同意した記憶がある。

 血の気が多くて癒しを求めている男の中に女の身で分け入るのだから、女として見られることは当然であり、そんなことは前々から分かっていたはずだと思ったのだ。

 今から思えば、それは男の勝手な都合に女を従わせる理屈であって、明らかな男尊女卑だった。

 女が無条件に男より劣位に置かれる状況に不満を持ち、「男にとって都合の良い女」として生きることを欲しないメアリーが、その理屈に従う道理はなかった。


 初日の刃傷沙汰に続く決闘騒ぎで、当時の私はメアリーに不満を抱いていたが、彼女の姿を見るたびに負の感情が渦巻いて頭がいっぱいになるかといえば、そうでもなかった。

 私は女に対してあまり良い感情を持たなかったし、女への欲望はあるにせよ、さほど関心を持っていたくはなかった。

 というのも、私がハリントンで買った女たちは、どういう訳か、私の前でビクビクと怯え、何かあるとすぐに泣き喚き、そのくせ期待通りの快楽を与えてくれない者ばかりだったからだ。

 加えて言えば、私は姉の一件以来、女を買うたびにつらい気分になるので、よほど必要に迫られなければそういうことはしなくなっていた。

 そんな訳で、私はメアリーに対しても心の中で距離を置き、別にお近づきになりたいとも思わなかった。

 だが、男の下心とは底知れないもので、メアリーがいくら物騒な騒ぎを起こしても、ボブを含む一部の男たちは熱心かつ執拗に彼女の好意を得ようと頑張っていた。

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