10-2
その夜、リジーが私を訪ねてきた。
私の生活は意図せずして女性たちに引っ張りだこのようだ。
一般的には女っ気がないはずの軍隊生活では、これはきっと幸せなことなのだろう。
「リヴィウスのことだけど、最近はあたしが夜にマンツーマンで鍛えてるから、心配いらないよ」
リジーはそう言って親指を立てた。
彼女の用事はそれだけだった。
そのとき、ニコラスのことは本人ではなくリジーに尋ねればよいのではないか、と私は思いついた。
「リジー、変なことを訊くようだが」
他に訊き方がないので、私は単刀直入に尋ねた。
「ニコラスはどんな女がタイプなんだろうか」
「え、ニコラス?」
私はてっきり「急にどうしたの?」と訊かれるものと思ったが、リジーはただ私からの質問の答えを練るだけだった。
「さあ、どうかな……? そもそもニコラスって女の子に興味あるのかな?」
「いや、俺に訊かれても……」
「そういうのって男の人同士の方がしゃべるもんなんじゃないの?」
たしかに。
「俺も本来はそうあるべきだと思う。ただ、あいつとはそういう話をしたことがなくてな」
「そうだ、ニコラス本人に訊けばいいよ!」
リジーはこのときになってようやくそのことに気付いたらしく、鬼の首を取ったように私を指差した。
私は何とか弁明せねばならない。
「いやさ、戦いも近いことだし、ニコラスと仲良くしたいと思ったんだが、こっちで準備しておかないとすぐに話題が尽きるじゃないか。
それで、お前さんに相談するのも変だとは思ったんだが、男同士が盛り上がる話と言ったら普通に考えたら女の話だろ。
それで、好きな女のことを話題にすればニコラスも反応するんじゃないかと思ったんだよ」
我ながら変な言い分だな、と思ったが、リジーはあまり疑問に感じなかったらしい。
「ニコラスが女の子に熱を上げてるところなんて、見たことないなぁ。本人に訊いてみなよ。たぶん何かしら応えてくれるよ」
と、リジーは気楽に言った。