表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダームガルス戦記  作者: あじさい
第9章 ルンデン
121/146

9-13

 ガレット嬢のマントと寝間着をすっかり脱がせて、私はいよいよ彼女の腰から足までを隠している下着に手をかけ、それさえも脱がせた。

 そのとき、私は驚きで目を釘づけにされた。

 先ほどまで私を支配していた興奮が冷め、引き潮のように顔から血の気が引いていった。

 私が抱いた恐怖は強烈なもので、今となってもあのとき自分がどれだけの間動けなかったのか思い出せない。


 ガレット嬢の下着の下には、鍵のかかった鉄製の貞操帯があった。


 貞操帯とは、股間を覆うことで、その名の通り女性の貞操を守る道具である。

 多くは夫が妻の浮気を防ぐ目的で妻に装着させるが、辱めに遭うことを防ぐ目的で女性が自発的に装着することも皆無ではなかった。

 とはいえ、衛生面に問題があるため、ほとんどの女性はこの器具を嫌っている。


 夜這いに来る女がわざわざ貞操帯を身に着ける訳がない。

 ということは、ガレット嬢は私のところに夜這いに来たのではない。

 つまり、今の私が置かれた状況は、女性助祭を本人の意思に反して襲った強姦魔ということになる。

 これは教会の権威を愚弄したということだ。

 だが、それ以上に私にとってショックだったのは、姉の一件以来、女を辱める男を憎悪しているはずの私が、そういう男のひとりに成り下がったことだった。


 私は自分の罪を取り繕うように、脱がせたばかりの下着を再びガレット嬢に穿()かせた。そして、彼女の寝巻を本来あるべき姿に整えようとした。

 だが、彼女は私の手を拒み、乱れた服のまま立ち上がって、私と距離をとった。


 ガレット嬢は泣いていた。

「ご、ごめんなさい」

 彼女は涙を拭って、なぜか謝った。

「夜中に押しかけておいて、こんなことってないわよね」

「いえ、こちらこそすみません」

 私は土下座して早口で謝った。

 教会から下される処分が怖かったのではなく、心からガレット嬢に対して申し訳ないと感じていた。

「誰にも言わないと誓ってください。そうすれば、今夜はこれでお暇します」

 私の返事を待たず、ガレット嬢は足早に去っていった。

 私は彼女の足音が聞こえなくなるまで、頭を上げることができなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ