9-8
リヴィウスは教練に出なくなった。
私たちは別に彼を咎めなかった。
問題児がいなくなってせいせいしていた。
そんな或る夜、リジーが私を訪ねてきた。
彼女の用件はリヴィウスのことだった。
リジーはリヴィウスが教練に出なくなったことを気にしていたようで、彼を説得して教練に出させようとしたらしい。
しかし、リジーは軍人だけでなく民間人に対しても治癒魔法を施すという「任務」に就いていたので、リヴィウスにばかり構っている訳にはいかなかった。
「ねえ、どうすればいいと思う?」
私の本音をそのまま言葉にすれば「放っておけばいいじゃないか」だったが、そう言ってリジーが納得するなら最初から私のところには来ない。
そこまで考えて、私はどうしてリジーが私を訪ねてきたのか気になった。
こういうとき、普通は同性の友達であるメアリーやアニーに相談するものではないか。
私は先にそれをリジーに尋ねた。
「2人と、それからニコラスにも相談したよ。でも、放っておけばいいって言うんだ。このままじゃリヴィウスが初陣で最悪の事態に陥るかもしれないって言っても、まるでお構いなしって感じでさ」
ニコラスは置いておくとして、メアリーとアニーはプライモア城で面と向かってリヴィウスに暴言を吐かれたし、アニーは自分の弟が、メアリーは自分自身が、彼の雷のせいで辛酸を舐めさせられている。
2人がリヴィウスを気遣う道理はなかった。
それに、戦力としてリヴィウスが重宝に値するのか、私にはもはや分からなくなっていた。
マイクロフトはリヴィウスの力が我が王国軍に必要だと言うが、火属性の半神の力が土属性と水属性の半神に通じないことが明らかになった今、それが本当なのか怪しかった。
ダームガルスの第2王女は土属性の半神だそうだから、むしろリヴィウスは足手まといになりかねない。
私がそのことを伝えると、リジーは難しい顔で言った。
「メアリーとアニーはリヴィウスのことを許さないし、リヴィウスを受け容れても王国軍に得はない、ってことだよね」
「平たく言えばそうだ」