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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第9章 ルンデン
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9-6

 リヴィウスのことはマイクロフト小隊で預かることになった。

 半神の所属先がジェンキンス隊やマイクロフト小隊に偏ることについて異議申し立てがあるのではないかと私は思っていたが、この件は水面下の根回しで片付けられたらしい。

 会議ではクロッカス将軍から他の将校たちに決定事項として通達されただけだった。

 たしかに、公爵家の子息が暴言を吐いてばかりいるとか、半神だから普通の人間の手には負えないなどといったことは、公式な(議事録が作られる)場で扱うべき問題ではなかった。


 マイクロフト小隊では歓迎試合を開くのが通例だが、マイクロフトの計らいもあって、リヴィウスは歓迎試合の洗礼を受けなかった。

 リヴィウスは雷を放つことこそできたが、武術はからっきしだったので、模擬戦をしても変なことにしかならないからだ。

 ニコラスが相手をしたらリヴィウスの雷は通用せず見かけ倒しだと他の隊士に思われるだろうし、ニコラス以外が相手をしたら雷にやられてリヴィウスが圧勝してしまう。

 どちらもマイクロフトが望む結果ではなかった。


 そもそも、リヴィウスはマイクロフト小隊に入隊したという扱いではなかった。

 もし入隊するのであれば、プライモア公爵の息子でありサルフォース子爵であるリヴィウスが、アルドレア伯爵の息子でありカストバーグ子爵であるマイクロフトの命令に従わなければならないことになる。

 いくらマイクロフト小隊が実力主義でも、そこまで身分を無視した処遇をすることは(はばか)られたし、第一に、もしそんなことを提案してもリヴィウスが承服しなかっただろう。

 歓迎試合は入隊時に行われるものだから、「行動を共にする」だけで「入隊はしない」という扱いのリヴィウスに対しては歓迎試合を開く必要がない、という理屈は一応理に適っていた。


 入隊しないのだから、当然、リヴィウスは小隊の過酷な教練に参加する意思を見せなかった。

 メアリーと私はもちろんマイクロフトとスタンリーもそれでいいと思っていたようだが、しかし、リジーが納得しなかった。

 彼女が言うには、戦場で危険な敵は半神だけではないし、半神にはリヴィウスの雷が通じないことが現にあるのだから、戦場に立つ以上、彼はできるだけの準備をしておくべきとのことだった。

 リジーが本気でリヴィウスの身を心配していることに、メアリーと私は驚いた。

 リヴィウスは、半神だの属性だのという話をマイクロフトから聞いて、リジーの治癒魔法が信仰心によってもたらされた訳ではない、つまり彼女は治癒魔法によって聖女になったのであってその逆ではないことを知ったようだが、それでも彼女に逆らえないことに変わりはなかったので、形だけでも教練に参加することになった。


 結論から言うと、形だけ教練に参加する、というのは無理な話だった。

 リヴィウスはそのときの新参たちと共に演習場の雪かきとランニングをさせられたが、圧倒的に体力がなかった。

 新参の体力作りを指導するのはニコラスの仕事だったので、当然、初日からニコラスとリヴィウスが対決することになった。

 鞭で殴られたリヴィウスは苛立ったときの癖で、暴言を吐きながら雷を放った。

 だが、私たちが予想していた通り、ニコラスには全く通用しなかった。

 それでもリヴィウスが暴言と放電をやめなかったので、ニコラスはリヴィウスが黙るまで鞭で殴りまくった。

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