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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第9章 ルンデン
113/146

9-5

「侯爵閣下がおっしゃったように、長期戦になったときの問題はランドン、カロス、ポラリスで反乱が起きかねないことです。

 ならば、反乱の芽を迅速に摘み取る態勢を整えれば良いです。

 和平交渉で時間を稼ぎ、教皇台下のご英断を待つ間、我が西部防衛軍をランドン、カロス、ポラリス、そしてこのルンデンに分散して配備すれば、不穏分子に対して睨みを利かせることができます」


「ちょっと待ちたまえ、カストバーグ卿」

 ガルモンド侯爵が口を挟んだ。

「4都市に兵力を分散した場合、ルンデンの防衛はどうするんだね? 帝都を前にして、風前の灯火になるじゃないか」


「籠城で重要なのは、敵に包囲されないことです」

 マイクロフトが答えた。

「そしてもうひとつ、敵軍に土属性の半神がいる状況では、彼女を活躍させないことが重要です。

 包囲に関しては、要するに、敵軍の包囲を突破して補給を続けられるだけの兵力を城内に残しておけば良いのです。

 そして、籠城の際に敵の半神を活躍させないためには、彼女が城壁を跳び越えたときに、城壁の上で彼女を食い止める別の半神がいれば事足ります。

 これらの点を踏まえた上で、籠城に足る最低限の兵力さえ残留させれば、ルンデンの防衛に支障はないはずです」


 小隊長でしかないマイクロフトは言わなかったが、「最低限の兵力」とは我々ジェンキンス隊を中心とした兵力のことだろうな、と私は思った。

 私はマイクロフトの説明に納得しそうになったが、将校たちばかりでなくスタンリーもしかめっ面をしていたので、思い直した。


「ご心配であれば、ポラリスを捨てて、兵力の分散を3都市に留めるという方法もあります。

 何事も完璧な解決を得ることはできない以上、それもひとつの手でしょう」

 どうにも、リジーの言葉が独り歩きして都合の良いように使われているな、と私は思った。


「カストバーグ卿」

 クロッカス将軍が質問した。

「仮に教皇台下がこの戦争に関して中立の立場をとったり、ダームガルスが講和の条件としてルンデンやランドンの返上を求めてきたりした場合について、どう考えるね?」


 マイクロフトは(よど)みなく答えた。

「ひとつ目の点に関して申し上げれば、フォスターの能力と存在をメシア教に(のっと)った正統なものと認めた時点で、教皇台下は充分我々の味方になってくださったと言えます。

 教皇台下ご自身がメシア教徒の直接的な動員を渋った場合であっても、フォスターに国内外のケガ人や病人を治療させれば、聖なる力を持つ彼女が我が軍に味方しているという事実が広く人々の知るところとなり、多くの人間が我々に加勢してくれるでしょう。


 もうひとつの点ですが、たしかに、ダームガルスが講和と引き換えにルンデンやランドンの返上を要求してくることは充分にあり得ます。

 ガルモンド侯爵がおっしゃったように、我が軍だけでなくダームガルス軍も時間稼ぎをしようと考えるはずだからです。

 しかし、我が軍はひとまずその条件を却下して良いと思います。

 ラースガード伯爵がおっしゃったように、ジルブラドという脅威を考えればダームガルスにとっても講和は益のある話ですから、いくら彼らでも、無茶な要求を貫くことに固執してせっかくの機会を無下にすることはないはずです」


 マイクロフトの提言はその場で採用されることこそなかったが、検討に値する案のひとつとして将校たちに受理された。

 当面の方針としては、我が軍からダームガルス軍に対して攻撃をしないこと、

 ダームガルス軍が我が軍を攻撃してきた場合には籠城策で応じること、

 ガルモンド侯爵とスクライブ伯爵が中心となって教会関係者と教皇に迅速な対応を求めること、

 バーバル小隊の任務の合間にリジーを民間人への医療行為に従事させることが取り決められた。

 和平交渉と兵力の分散については、さらなる情報収集をした上で次回(5日後)の会議で再度検討することになった。


 とにかく、しばらくは生き死にの心配をしなくて良さそうだ、と私は思った。

 ダームガルス軍が攻めてきても我が軍が籠城策をとることから考えれば、剣と槍が中心のマイクロフト小隊の出番はまず来ないからだ。

 もちろん、土属性の半神である第2王女が城壁を駆け上がってきたときは別だが、モルリークと同じで、包囲してしまえばこちらのものだ。

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