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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第9章 ルンデン
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9-3

 翌日の3月1日、将校たちの会議が開かれ、エドガー、パーシヴァル、私の3人もマイクロフトとスタンリーのお供を務めた。

 リヴィウスも出席した。

 ただ、会議の内容は軍事機密の扱いなので、教会の視察団は同席しなかった。

 会議では、まずガルモンド侯爵がウベルギラス国王、教皇、プライモア公爵たちとの会見とその成果について報告した。

 次に、ルンデンに残留していたラースガード伯爵が外交官やスパイから得た情報を基に国際的な状況を整理して、ガルモンド侯爵たちに報告した。

 最後に、それらの報告を踏まえて、クロッカス将軍の主導で今後の方針が検討された。


 この冬、私たちはリジーの能力について教皇のお墨付きをもらうことで、火属性の半神であるリヴィウスを我が軍に引き入れることに成功した。

 また、教皇は今回の戦争に関して、我が王国に加勢することを前向きに検討すると明言してくれた。

 教皇の影響力の大きさと、それがリジーの存在によって補強されることを考えれば、外交の成果としてはまずまずと言える。

 アンドレアス司祭たち視察団の報告次第では、教皇が広くメシア教徒たちを動員してくれる可能性がさらに高まる。


 北のエルデリア王国は古くからの中立国なので、この戦争には介入してこない。

 我が王国の東に位置するアマルディア帝国ではまだ内戦が続いているから、我が王国が挟み撃ちに合う心配はない。

 残る問題は、ダームガルス帝国の西に位置にするジルブラド帝国だった。


 仮にジルブラドが我が王国に加勢してくれれば、ダームガルスを挟み撃ちにすることができる。

 そうなれば、ダームガルスはその戦力を東西に分散する必要が生じ、我が軍としては非常に戦いやすくなる。

 だが、前述の通り、我が王国軍の将校は戦争の取り分が減ることを懸念して、ジルブラドとの同盟締結に消極的だった。


 ラースガード伯爵によると、我が王国軍が方針を決めかねている間にも、ダームガルスがジルブラドと交渉を進めた。

 ジルブラドはダームガルスに対し、同盟締結の条件として旧ディストロリス領全域とダームガルス西部の領土の割譲を要求した。

 現代の歴史家たちは、このときジルブラドがダームガルスの足元を見たという評価をしているようだが、私が思うに、したたかな交渉では最初に難題を吹っかけて徐々に要求を小さくしていくという手法がとられがちなことを考えても、これくらい言わないと採算が取れないというのがジルブラドの考えだったのだろう。

 というのも、仮にダームガルスがこの窮状を脱して我が王国に勝利するようなことになれば、次に狙われるのはジルブラドに違いないからだ。

 しかし、いくら帝都陥落の危機とはいえ、ダームガルスとしてはこの条件を軽々しく呑むことはできなかった。

 旧ディストロリスは鉄が多く採れる地域で、ダームガルスの軍事的躍進はこの地域からの武器の供給と、鉄製品の低価格化に伴う農業技術の発達によって支えられていた。

 そこを明け渡せば、今度はジルブラドが軍事的躍進を果たして、我々ウベルギラスとの戦争に疲弊したダームガルスに戦争を仕掛けるおそれがある。


 ダームガルス国内で意見が割れたこともあり、交渉は難航したようだが、去る2月25日、ダームガルスはジルブラドの要求を呑んだ。

 ジルブラドは我が王国との国交を断絶した。

 我が軍の将校たちにとって、これは予想外の展開だった。

 ジルブラドからの救援軍は、早ければ3月10日にダームガルスの帝都ゲイルフォースに入る見込みだ。

 これが実現すれば、前年10月に2500まで減っていた敵兵力は6000に膨れ上がり、我が軍の兵数4500を再び上回ることになる。


 さらに、ダームガルスの第1王子で、病床の帝王に代わって実権を握ったエルロイドが、旧ディストロリスで不穏分子の鎮圧を任されていた第2王女ツィーノ(土属性の半神)と、まだ幼いという理由で今まで参戦していなかったタッシベル伯爵令嬢(風属性の半神)を帝都に呼ぶ準備を進めているという。

 すっかり総力戦の構えだ。


 我が軍としては敵の準備が整う前に攻撃を仕掛けたいところだが、ゲイルフォースを攻めるには1つ問題があった。

 天候だ。

 雪については、ゲイルフォースへの道を商人たちが踏み固めてくれたので行軍にも支障はない。

 だが、季節の変わり目で天気が変わりやすく、バルヴァン侯爵の雷を警戒せざるを得なかった。

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