漫才 「コマーシャル」
ボケ
「ハイどうもー。バーニングトーストです」
ツッコミ
「もうね、事務所からコンビ名変えろって、666回言われてるんですけどね」
ボケ
「変えません、僕の目の黒いうちは変えさせませんよ」
ツッコミ
「お前それ、社長に直接言うたやろ。いよいよ社長がお前を殺すって言うてたぞ。謝ってこい」
ボケ
「えー、遅いです。もう楽屋で返り討ちにしました。ところで僕、SNS始めたんですよ」
ツッコミ
「ぜんぜん聞き捨てならないんですけど。まあええわ。SNSですか?」
ボケ
「面白いですよSNS。ソーシャルネットワークサービスですよ。君はなんでやらないんですか。いまの時代、死にかけのお年寄りでもやってますよ」
ツッコミ
「死にかけのお年寄りって、うちの社長じゃないでしょうね。ちょっと楽屋見てきていいですか」
ボケ
「この話終わってからにして下さい。SNSですよ、タダなんですからやってください」
ツッコミ
「え、SNSってタダなんですか? ほなSNSの管理会社って、どうやって儲けてるんですか?」
ボケ
「缶入りサイダー?」
ツッコミ
「管理会社です。いや、皆にタダで使わせてんねやったら儲け出えへんやん」
ボケ
「それが出るんですよ。スマホの画面に広告入れよるんですよ。お金ガッポガッポですよ」
ツッコミ
「ああ、なるほど。あの、アレ、動画サイトとかでもCMあるもんね」
ボケ
「それです。5秒後にスキップとかいうやつ」
ツッコミ
「俺の忍耐力が5秒も持つかって言いたいね」
ボケ
「忍耐力で思い出した。CM、あれ何とかなりませんか」
ツッコミ
「なんとかと言いますと」
ボケ
「あのね、面白いCMやったら喜んで見るんですよ。じゃなくて、わけのわからないCMはホンマやめて下さい」
ツッコミ
「興奮してきたね。バーニングトーストらしくなってきましたよ」
ボケ
「バーニング……何のことですか」
ツッコミ
「俺とお前や。ハイそれで。わけのわからないCMとは」
ボケ
「なんかね、よく見るのがスマホゲームのCM。あれが早口すぎて聞き取れないんですよ」
ツッコミ
「あなた基本的に耳おかしいですもんね」
ボケ
「いやいや、このまえ見たCMもそうですよ。意味不明でしたね」
ツッコミ
「どんなんか内容教えてくださいよ」
ボケ
「七つの海を10個集めて、お姫様から魔王を救え。ドラゴンを操作し、主人公の野望を打ち砕くのだ」
ツッコミ
「砕くなや。どんなゲームやねん」
ボケ
「いや早口すぎて聞き取れへんのよ。かろうじて聞き取れた単語から推理するに、こういうゲームじゃないかなと」
ツッコミ
「逆にやってみたいわ。え、じゃあゲームのCMは全部キライなんですか」
ボケ
「ちがうんです。ワケのわからないCMがキライなんです」
ツッコミ
「おお、食い下がるねえ」
ボケ
「当たり前じゃないですか。七つの海を10個レベルですよ。僕のお母さんもドラゴンですよ。すいません。もうちょっと、さっきのネタで引っぱれると思ったんですけど無理でした。なんとか面白くなるように、あなたのほうで誘導してもらえますか」
ツッコミ
「あのね。お願いですから、場の空気をズタボロにしてから僕に丸投げするのやめてください。一回やり直しましょう」
ボケ
「えー、コマーシャルですよ。やっぱりね、CMは商品の中身で勝負していただきたい。もっとですね、自社製品の性能を訴えていただきたい。そこを視聴者にアピールしてほしいですね」
ツッコミ
「薬のCMとかそんなの多いじゃないですか。頭痛にどうたらとか。効き目がどうこうとか」
ボケ
「全部がそういう感じでいいと思うんですよ。いつかアレですよ。僕たちにもCMの仕事が来ないかなと思ってましてね」
ツッコミ
「お、あなたはどんなCMに出たいとかあるんですか」
ボケ
「SNSですね」
ツッコミ
「えー……あ、え?」
ボケ
「SNSの宣伝をさせていただきたい。みなさん、SNSを始めませんか。ぜひ我が社のサービスをお使いください、みたいな感じですよ」
ツッコミ
「それをテレビで流すんですか」
ボケ
「そのためにSNS始めたんじゃないですか。こういうとこで運営会社にアピールしていかないと」
ツッコミ
「いや、それだったらまず相方の僕に使わせてみせてくださいよ。あれですか、御社のSNSを使うと、なんかいいことあるんですか」
ボケ
「そういう問題じゃありません。使ってるのがステータスなんです」
ツッコミ
「すでに意味不明でムカついてるんですけど。ステータスですか」
ボケ
「私はSNSをやってる。これがすでに誇るべきことなんです。今日からあなたもクラスの人気者ですよ」
ツッコミ
「なるほど、SNSはすること自体に意義があると」
ボケ
「なにを書きこむかは二の次なんですよ。まず使ってください。それで目的の半分は達成してるんです」
ツッコミ
「なるほど。それで、肝心のもう半分は」
ボケ
「ダンシングオールナイト?」
ツッコミ
「肝心のもう半分! もうええわ!」
二人
「どうも、ありがとうございましたー」