下賤の冒険録
今日、僕は親のもとを出る。
親と言っても僕が小さいときに拾われたので正直に言えば
義母、義父である。
僕の義母、義父は龍神族である。
いわゆる神に近い存在だ。それに比べ、僕は下賤。
皇族・貴族・平民・下賤。手の甲に紋章があり、すぐにその
者の身分がわかる。だから、皆手の甲を見て対応を変える。
これがこの世の中の在り方だ。
だから、下賤である僕は、もはやゴミ以下の存在だ。
それにもかかわらず2人は、自分をまるで本当の子供のよう
に育ててくれた。
「今までありがとうございました!」
「うぇ~~~~~~~~~~~~~~~~ん。グスッ。ほ
んとに行くの?」
「はい。お母さん同然に育ててくれてありがとうございま
す!」
「お母さんでしょ?」
「はい!」
「いつでも帰ってきていいのよ?行かなくてもいいのよ?
いや、行かないで。………………………行くな!」
なんか、後半が本音のような.....
「お前はワシの修行を耐えた。まずもってイーバンより強
い奴はこの世にはいないだろう。
おぬしの強さは人知を超えてるからのぉ。」
「お父さんもありがとうございます。
二人とも大好きです!!!!」
「今聞いた?あなた」
「あぁ。」
「わたしも(わしも)“あなたを愛してます!”」
僕はリンファー、ゼオンとハグをし、家を後にした。
イーバンの住んでいた場所は神の峠と呼ばれた場所だ。
龍神族が住んでいるという伝説、また規格外の強さを持つ
魔物やイレギュラー《天災》と呼ばれる天気の変化が数時
間に2,3回以上起こる。
もしこのイレギュラー《天災》が都市で起こったら1回で
何万人もの死者が出るくらい
恐ろしいものだ。
だが、イーバンはそれらに耐えてきた。まずもって規格外
の強さであるのは間違いない。
しかし、イーバン自身は自分がこの世の中で最強に近い存
在ということは知らない。
丸2日かけて神の峠を無事に出た。そして4日経ち神の峠
から相当遠くに来たある日、遠くから叫び声が聞こえた。
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「私に続け!!魔物を駆逐するぞ!!!」
“剣姫様に続けぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!”
剣姫とは国に1人いる国最強を誇る剣士のことである。
その声とともに先頭の容姿端麗のきれいな女性(剣姫)を
筆頭に100人近い兵士が50体ちかくの鳥の魔物に向か
って突撃した。
兵士はどんどんやられていくが、剣姫はどんどん鳥の魔物
を葬っていく。
剣姫の顔は返り血で塗られ、まるでバーサーカーのようだ。
しかし、鳥の魔物は仲間を呼び、目の前には500を超え
る鳥の魔物が集まった。さすがの剣姫も何百もの鳥の魔物
が来てはどうしようもない。皆、手に握っていた剣は自然
と地面に落ちていた。
剣姫も同様だ。剣姫は死を覚悟した。
そのとき、剣姫の前にはある少年が立っていた。
「少年!逃げろ!!私でも勝てないのだ。今逃げれば生き
残れる可能性は残ってる!!」
「大丈夫です。いま助けます。」
それだけを言うと少年は前に出て剣に手をかけた。
その瞬間、500体ちかい鳥の魔物たちの頭が一瞬にして
吹き飛び。血の雨が降った。
誰もが目を疑った。何が起きたかわからない。
しかし、剣姫だけがわかっていた。
この少年がやったのだと.......。
ドキンッ。その瞬間、剣姫の中の何かが動いた。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「・・・・・・・・・・・」
剣姫は少年の顔を見て顔を真っ赤にして下を向いた。
イーバンは剣姫の手の甲を見て貴族だとわかり、剣姫が
黙っている理由がわかった。
自分の手の甲を見て下賤だとわかり話したくないのだと
理解した。
答えは、否である。
「すいませんでした。貴族様だと知らずに話しかけて
しまって、いますぐ立ち去ります」
イーバンは焦って去ろうとすると、
「待って!!!」
イーバンは固まった。剣姫に引き留められたのだ。
殺される。
絶対殺されるとイーバンは思い、あの手を使おうと思った。
「すいませんでした。どうか命だけは....。
お願いします!!」
イーバンは土下座をした。土下座はゼオンがリンファーに
よくやっており、ゼオンいわく謝罪の最終形態と言ってお
りそれを思い出し実行した。
「何で土下座をするの?なにもしないって!!」
「本当ですか?」
「本当!!」
「ありがとうございます!!」
「私の名前は、ロクデオン・フォン・アクエリアス。
アリスと呼んで!名前聞いてもいいかな?」
「僕の名前はイーバンです。アクエリアス様宜しくお願い
致します」
「ア・リ・ス!」
剣姫は頬を膨らませながら言った。
「アリス様ですね、わかりました。では、失礼します。
またどこかで会えるといいですね。」
イーバンは帰ろうとした。イーバンは貴族が怖いのである。
だから、一刻も早くこの場を離れようとしたが剣姫に手を
つかまれた。
「どこいくの?居なくならないでよ。」
泣きそうな顔でアリスは言ってきた。
「僕は下賤。アリス様は貴族。一緒にいていいわけ
ありません!」
この時イーバンは困惑していた。
(なんでずっと手を握ってるの?母さん(リンファー)以外
はじめてだよ。しかもよりによって、貴族様!どーしよ
どーしよ・・・・・・・)
その時、アリスはイーバンに抱き着いてた。
「王都に行くまでこのままだから!!!!!」
この時、何か良からぬことが起こるのではないかとイーバンは
予期した。