第九章・ギルド「トライアングル」
カードの輝きがなくなると僕たちはギルド「トライアングル」の前に立っていた。
「昔と何も変わってないね」
「掃除だけはされてるみたいだからね」
ボスさんはゼロ・グラビティの魔法で物を浮かせることができるので、自分で掃除する必要は無い。
「本当に魔法使いみたいな人だよね」
「魔法使いじゃなくて、宇宙人だけどね」
それはそうなんだけど…。
「ボスさんはいつもの大広間にいるはずよ――早く行きましょう」
「う、うん」
フウに先導されて、僕たちはギルド「トライアングル」へ入る。
「ここって防犯はどうなってるのかな?」
「結界が張ってあったのが見えないの?死者の里と同じように悪しき者は入れないはずよ」
死者の里に行ったことがあるフウにそういわれたら、何も言い返せない。
「悪しき者って悪魔のことかな?」
「心が純粋な人のことじゃないかな?」
そこまではフウも分からないらしい。
*
大広間に入るとそこではボスさんが紅茶を飲んでいた。
「おはよう、二人とも。手紙は昨日着いたはずだけど、今日来るのは早くないかな」
『ちびっこ少年に気の強い少女か。もう来るとは我も思わなかった』
そこにいるのはボスさん一人だが、首には赤色の宝石が組み込まれたペンダントを下げている。
その中にいるのが『孤高の悪魔王』の魂の一部だ。
「ちびっこ少年って僕のことですか?その呼び方止めてほしいんですけど――」
「誰が気の強い少女ですか!」
『気が強いのは事実だろうが』
「もう一度――」
「アヴィス、話が進まないからそれぐらいにしよう」
『そうだな』
「それで二人を呼んだ理由は手紙に書いたよね――どうだい、二人の決心は」
フウはまだ何か言いたそうだったが、それを止め、僕に目配せしてくる。
”先に言え”ということなのだろう。
「僕はギルドに加入したいと思います。フウも――」
「もちろん加入します」
僕たちの決心を聞いたボスさんは、
「良かった。じゃあ、まずは二人が泊まる部屋なんだけど――」
「家から通っちゃダメなんですか?」
フウのその言葉に、
「通勤みたいに行ったりきたりされても困るよ。僕だってやることがある。ギルドを留守にする時もあるからね」
『それに我が残ったとしても動くことは出来ない。応対が限界だ』
確かに誰かが来たとき誰もいなかったら困るだろう。
「前の時はどうしてたんですか?」
「彼らは頻繁にギルド「トライアングル」に来てたからね。誰かしらに頼んでいたよ。悠くんは「俺は荷物の受け取りしかしませんからね!」とか言ってたけど」
『あの少年はまったく』
ボスさんの声真似は意外と似ていた。