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第二章・いつもの朝は…
僕の頭に当たったのはフライパンだった。熱してなくて良かった。
「朝食食べないんならいいけど」
「た、食べるよ」
「ちょっとカワイイ顔してるからって調子にのって――」
フウが何かを言ってるが、僕にはよく聞こえない。
「どうしたの、フウ?」
「何でもなぁ~い。私、先に行ってるからね」
「う、うん」
フウは先にスクールへ行ってしまう。
僕もフウもそこで先生みたいなことをしている。それは僕たちが契約者だからだ。
フレア兄さんとリン姉さんはこのガルアの町に養成所を作った。契約者のための養成所だ。
「僕も着替えていこう」
朝食を食べた後、カーテンを閉めて、着替えを始める。
(これはやっぱりなぁ)
けれど僕はこの服しか持っていないし、これはリン姉さんが僕に作ってくれたものだ。
『マザー様に裁縫を教えてもらってね、自分で作れるようになったの!』
リン姉さんが作った黄土色の服を着て、僕は外へ出る。
(暖かいなぁ)
僕は春の暖かさを感じながら、歩き出す。
それは結婚式から5年後の、2026年4月1日のことだ。