第十五章・アレクサンダー
僕とフウは無事にギルドに加入し、マリエスさんがギルドに戻った後の一ヵ月後――五月のこと。
僕らはクエストを順調にこなしていたんだけど――
「Eランク以上限定のクエストか…」
Fランクでも出来るクエストがなくなってしまった。
「どうしよう、フウ」
「Fランクマスターに勝つしかないんじゃない?」
フウからはそんな答えが返ってくる。
(やっぱりそれしかないのかな…)
僕がそう思っていると、
「何悩んでんだ、ドル」
一人の少年が窓から入ってくる。
「アレク兄貴!」
「君は?」
僕が叫んだのと、兄貴が窓から入ってきたのを気にせず、ボスさんは普通に聞く。
「俺はアレクサンダー。ドルの兄貴だ!」
「ドルくんのって、彼にはいないんじゃ――」
そこでフウがボスさんに説明する。
「あの人は勝手に兄貴と言ってるだけですよ。ドルってあの顔だから――」
「なるほどね。女子や同性愛者にはモテモテってわけか」
「はい。それもあの人いきなりやって来て、「俺を兄貴と呼べ!」とかいったんですよ。最初はドルも怪しんでいたんですけど、今では――」
フウとボスさんはなぜか僕と兄貴を見て、
「そういうわけで彼は兄貴ということにしてください。そうしないと面倒なので」
「分かったよ」
今度は僕らを見るのを止め二人で、
「あれで筋肉質なら、マダムキラーになれると思うんですけどね」
「同感」
その声は小さくて僕には聞こえなかった。
*
(やっぱりこのギルドは面白いな)
私は見ていて、そう思った。