悠サイド「久々の出会い」
私が回転寿司屋に入ると、そこでは悠さんが座っています。
「お久しぶりですね、悠さん」
「お前もな、飛鳥」
悠さんは読んでいたラノベを閉じて、私に話しかけます。
私は悠さんの座っている向かい側へと座ります。
「何を読んでいるんですか、悠さん?」
「新作のラノベだよ。こんな機会じゃないと読めないからさ」
確かにそうかもしれません。高校を卒業し、あの『最終戦争』の時から十年が経っています。私は科学者の夢を叶え、悠さんはラノベ作家の夢を叶えて、プロラノベ作家になっています。今は忙しいでしょう。
私たちが話していると、
「おう。悠、久しぶり」
と言って悠さんの横に座ります。
「暑い。もう少し離れろ」
「なんでだよ」
「見れば分かるだろ。くっつきすぎなんだよ」
「いいじゃんか、久しぶりなんだし」
そう言って、涙さんは離れます。十年経っても今の私たちの関係は変わりません。
「悠・涙・飛鳥!遅れてゴメン!」
遅れてテリーさんもやってきます。
「気にするなよ。夜遅くまで仕事してて、起きたのはさっきなんだろ」
「なんで分かるの!?」
「寝癖がついてる」
「ああ」
テリーさんは手鏡を出すと、携帯用のスプレーから水を出して、寝癖を整えます。
「涙が連絡してくれなかったら、私、寝遅れてたかも」
「悠の親友のためだ。安いもんさ」
(本当にそう思っているんでしょうか?)
涙さんの目が笑っていません。
八年前、私たちの卒業式にテリーさんは式台で悠さんへの親友宣言をしたので、誰もが驚きました。
それからというもの、悠さんの親友は涙さんとテリーさんの二人になっています。
「この二人、何なの?」
「さぁ、何なんでしょうね?」
テリーさんは私の隣に座って、食事会が始まります。
「最近は寿司屋にハンバーガーがあるらしいな」
「私もそれ食べたよ。すっごいおいしかった」
「俺は別に食べてないけどな…」
こうやって話が進んでいきます。
「それにしても悠。お前鍛えてないな。どうだ、俺のジムで鍛えていかないか?今ならサービスするぜ!」
「断る。俺はそういうことに興味が無い」
涙さんは自分でスポーツジムの経営をしています。インストラクターもやっていて、こうやって誘うことがよくあります。
「それなら、フィットネスクラブはどう?痩せたいと思ってるんじゃない?」
「それは思ってるが――」
テリーさんはフィットネスクラブでインストラクターをしています。
そう言いながらも悠さんはたまごを食べます。
食べ終わって、
「――やっぱりいいよ。まだ仕事も残ってるし」
「そうか。まぁ、いつでもいいよ。来た時は相手するしさ」
「アタシもね。ライバルには負けられないし」
涙さんとテリーさんの間で火花がとびます。
私はそれを見ながら、
(次はいつ集まれるだろう…)
そう思いました。