第十四章・マリエス
「ドルくん・フウちゃん。お久しぶりですね」
「フウ、マリエスさんが!」
「今、忙しいの!話しかけないで!」
フウがウィンドアローを撃つが、それをシーサーゴンは軽々とかわす。
「全く当たってないけど、弓の精度が低いんじゃない。マサトくんなら確実に当たるわよ」
「うるさい!そんなことは分かってる!それよりもオバサンはどこに行ってたのさ!」
「オバサン……。確かに十五歳の二人に比べれば、私はオバサンかもしれないけど」
フウの何気ない言葉は、マリエスさんにダメージを与えたらしい。
「まぁ、それは今は置いといて。それよりも――」
マリエスさんは杖をシーサーゴンに向けて、
「――ストマケーク!」
シーサーゴンはストマケークで腹が痛くなって、地面に落ちる。
「これでソイルでも当たるでしょ、ドルくん」
「は、はい!」
僕は目一杯の魔力を注ぎこんで、
「ソイル!」
ソイルを撃って、シーサーゴンを倒す。
*
ダンジョンを歩く道すがら、ずっとフウは不機嫌だった。
「まさか、オバサンに手柄を取られるなんて」
「聞こえてるわよ」
マリエスさんは溜め息を吐く。
「私がギルドを捨てて、勝手に旅に出たのは謝るわ。それにテリーが向こうの世界に行ったのも知らなかったし」
昔はテリーさんと呼んでた気がするが、いつから呼び方が変わったのだろうか?
「私は涙さんとの戦いで負けて、自分がやったことの大きさを理解したの。だから、ギルドから出て、旅に出たの」
「それって勝手ですよね。テリーさんとオバサンがいなくなったから、ギルドにはボスさんしかいなくなったのに」
「それはさっきも言ったように謝るわ。それにギルドにも戻るつもりだし」
「これでボスさんも負担が少なくなりますね」
「オバサンの働きしだいだけどね」
「そのオバサンっての止めてくれない?」
「絶対に止めない!」
フウとマリエスさんが仲良くなるにはまだ時間がかかりそうだ。
そんなことを言ってる間に僕たちはダンジョンの入り口へと出る。