第一章・過去の思い出
今から五年前――僕が十歳の時の話だ。
僕は結婚式場でフレア兄さんとリン姉さんの結婚式を見ていた。
フレア兄さんの赤のタキシードとリン姉さんの黄のウエディングドレスが普通に目立っている。
僕たちは全員が黒のスーツなので、新郎新婦が輝いて見える。
「二人とも綺麗だね、フウ」
「そうね。ドルも普通に似合ってるけど」
「はは…」
最近フウが大人っぽくなっている気がする。
年を取るほど女性は綺麗になると言うが、本当みたいだ。
『――私がフレアとリンと出会ったのはちょうど十六年前。私が五歳の頃でした――』
「スイリュウ様が謝辞を述べられている。感動です!」
「泣くなよ。俺たちは新郎新婦の両親の役なんだから」
「わ、分かっていますよ!」
フレア兄さんとリン姉さんの両親の役は契約獣のアクアとライがしている。
二人は養護施設で育ったので、両親がいないのだ。
マザー様は「メモリアルストーリー」をいう魔法の影響で遠くにいるので、マザー様が母親代わりになることもない。
「ピギー」
ちなみに僕らの横ではドゴンが料理を食べていた。
まさに花よりだんごって感じだ。
「ゴム」
「これが人間の結婚式。長いこと生きてはおりますが、初めて見ますね」
僕の契約獣のゴルとフウの契約獣のセンリュウも二人の晴れ舞台を見ている。
「僕たちもいずれ結婚するのかな?ねぇ、フウ――」
僕がそう話しかけると、フウはいなかった。
(あれ?)
周りも見るとゴルもセンリュウもいない。みんないなくなっていた。
「えっ、みんなどこに――」
「起きなさい、ドル」
どこからかフウの声が聞こえてくる。
「フウ?」
「起きなさいって言ってるでしょうが!」
何かが僕の頭に当たる。