始まり
久々の投稿。
リハビリです。
その日、聖都【エヴィルガーデン】に衝撃が走った。
何故なら最強の【聖騎士】が悪魔と繋がりがあったのが発覚したからだ。
そして、教皇や王はすぐに対処に当たった。
広く煌びやかな大部屋に厳しい表情をした者達の視線を真っ向から受けて歩く1人の青年が居た。
「これはこれは近衛の方々に司教の皆様がお集まりになってどうなさったのですか?」
冷めた目で周りを見渡し青年は溜息をつく。
「おい!陛下の前でなんだその態度は!」
1人の近衛が噛みつく。しかし、近衛の言葉に返したのは青年ではなかった。
「……よい。至急来てもらったのは其方にある疑惑があるからだ。心当たりはあるか?」
王は間違えであって欲しいと願い口にした。
「心当たりですか?私には検討もつきませんが?」
青年の回答からは本当に何も分からないと感じ取れた。司教達にも真偽を確認したが青年の言葉に嘘がない事が知れた。それに対して王は安堵の息をつく。
しかし、そこで異議を唱える者がいた。
「それは嘘だ!私は知っているぞ、貴様が孤児院に悪魔達を匿っているのをな!」
1人の騎士の言葉に青年は、あぁ〜と頷く。その仕草に場の空気に緊張が走った。
「彼女達は守るべき対象だと判断しました」
その青年の言葉で場が崩壊した。
近衛達は攻撃体制に入り、貴族や司教達は罵声を青年に浴びせた。急に場が荒れたので家臣の数人は怯えてしまう。しかし、青年は堂々と一歩。
一歩踏み出した青年に対して近衛達は青ざめる。
「陛下、お言葉ですが、皇国は邪悪なるモノを許さない。そうですね?」
青年の言葉に王は頷く。
「なら、私は民であるあの者達を守る義務がある。彼等は確かに魔に繋がる者だが邪悪ではない。それに皇国以外は種族として受け入れています。【勇者】の働きによって」
勇者の言葉で教皇や司教が苦虫を噛み潰したような表情を作る。
しかし、王は顔を横にふる。
「それは出来ぬ。皇国ではその様な事実はない。悪魔は人を誘惑し操る。そして、悪戯に人を殺める。勇者の偉業に意を唱えるつもりはないが、悪魔を受け入れる事に対しては皇国としては許せぬ」
その言葉を聞いて、青年は落胆する。その姿に激怒した1人の貴族が前に出る。
「それでも名たるホーリー家の者か!悪魔に魅了されるなんて前代未聞だ!」
貴族に青年は冷めた目を向ける。
「父上、ホーリー家は悪魔の魔法に耐性がありますし、悪魔に魅了されてませんよ。ではないと【聖騎士】にはなれませんからね」
王は今のやり取りで青年が国を裏切ってない事は確信した。だから、提案を出した。
「他所の国では悪魔も受け入れる流れがある。ならば、勇者を立てて孤児院の者達の処罰は国外追放し、其方には半年間ほど特区の任務を遂行する。それで良いな?」
この場に来てから一度も表情を変えなかった青年が初めて表情を変えた。
無表情に近い冷めた目に怒りが加わり、場の雰囲気がガラリと変わる。
「……陛下。彼等は罪も犯してない皇国の民ですよ?」
青年の言葉に何人かは反応したが、それを消す様に貴族や司教から「悪魔としての存在そのものが罪だ!」と罵声が広がった。
「それがこの場の答えなのですね?」
王は苦渋の表情を作り頷く。
分かりましたと青年は頷き王の前まで歩く。そして、腰にある剣を外し床に置く。すると周りが騒めく。
「陛下。私は皇国の聖騎士としては相応しくないでしょう。このエクスカリバーを皇国へお返しします。私は邪悪なるモノを祓い、民を守る聖騎士です。魔に繋がる者でも善良な民。民を守れない私にその剣を持つ資格は無いでしょう。教皇、そうですよね?」
教皇は面白くなさそうに頷いた。
王はその姿を見て青年に口を開く。
「其方は何故悪魔を庇う?」
青年は初めて和らいだ表情を作り語る。
「彼女は確かに悪魔です。しかし、人と同じように笑い泣き哀しみ怒ります。そこに私達との違いはどれ程あるのでしょうか?排除するだけで解決出来るのなら見てみたいモノです。だから、皇国以外の国はその道を選んだ。なら、私も時代の変化について行くまでです」
「しかし、悪魔との和解など歴史が物語っている。それに話を聞く限り、悪魔の女性に肩入れをしているようだ。お互いに不幸になるぞ?」
王の言葉に青年は笑顔を作り話す。
「彼女の魔の力は私の聖の力で無効化されます。彼女と対等に釣り合えるのは私の様な聖の魔力を持つ者ですよ。では、私も彼女達と共に出て行きます。今までありがとうございました」
青年はそう言葉を残し去って行った。