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転生時に女神に呪われたが、どう考えてもそれがチートスキルな件について  作者: さっちゃー
第二章 旅立ち~冒険者へ
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2-17

更新が遅れまして大変申し訳ないです。

ひよこのケーキ先生の「謙虚、堅実をモットーに生きております!」に大ハマりしてました。

めっちゃ面白いです・・・


 俺も困っているが、大男もちょっと困ったような表情を浮かべている。大男はおもむろに外套のポケットから1枚の紙を取り出すと、俺に見せてきた。そこにはこう書かれてあった。


『私の名前はマリユスです。

 訳があり、絶えず食事をしている必要があります。

 このような無礼をお許しください。』


「な、成る程。」


 俺は理解した旨を伝えるのが精一杯だ。何なんだ? 絶えず食べる必要性って?


「シンクごめん! 大丈夫!?」


 ルイスがパニックから復帰して謝ってくる。


「大丈夫だ。俺こそ、済まん! 偉そうに言っておいて、ルイスにモンスターを近づけちまったな。それよりも、こちらの方にお礼を言うのが先だ。」


「あ、そうだね。助けていただきありが……とうございます?」


 ルイスも、お礼を言っている途中でマリユスさんが食べているのに気がついたようだ。

 再び、マリユスさんは困った顔をして、食べかけの物を口に詰め込み、両手を動かし始めた。……これは……。


「『礼には及ばない』、ですか?」


 マリユスさんは驚き、そして肯定の頷きが返ってきた。しかし、”手話”のスキルを使うのは初めてだな。


 マリユスさん曰く、街道を歩いていたら、武器を準備して森に入っていく俺達が見えたらしい。子供だけでモンスターと戦うのは危ないと思い、加勢するため追いかけて来てくれたようだ。しかし、子供だけって……まぁ、世間様からそう見えるのはもう否定しまい……。


「一応、2人とも15歳なんです……。」


『それは失礼した。……しかし、2人だけでは子供と侮り、襲う者も出よう。』


 そうなんだよね。パッと見、子供に見える2人だけだと、ペッレの町でチンピラに絡まれたように、盗賊に襲われる可能性があるんだよな。マリユスさんは心配そうな顔をしている。


『私で良ければモイミールまで同行したいところだが、体質的に長時間の移動ができない。』


「体質的……ですか?」


『3時間に1時間程、休憩を取る必要がある。』


 持病とかかな? うーん、余裕を持った日程を組んでいるので、それくらいなら俺たちは問題無い。ちらっとルイスを見る。まだ青い顔をして、先程の失敗を引き摺っているようだ。ルイスのメンタルが回復してないとなると、仲間がいてくれた方が心強いのだよな。


「俺たちは日程に余裕があるので、よろしければご一緒していただけませんか?」


 要らないトラブルが減るなら助かるし、結果、早く着くことだろう。この状態のルイスを連れたまま盗賊と遭遇でもしたら、目も当てられない。


『そうか。では、そうするとしよう。』


 こうして、マリユスさんと一緒に行くこととなった。


「シンク、本当にごめんよ。」


 どよんとした声でルイスが謝ってくる。魔術に俺を巻き込んでしまったのが、相当応えたようだ。


「うーん。あのモンスターの動きは、俺も正直驚いた。改めて、ちょっと連携の訓練しないとな。」


「……うん。」


 へこむのはわかるが、ここは安全ではない場所だ。落ち込んでモチベーションが下がればそれだけリスクが高まる。ルイスには、もう少し前向きになってもらいたいのだけど……。そうだ!


「ルイス、そんなに反省しているなら、ついでだ。狙って魔術を発動するまでのプロセスを、ちょっと見直してみないか?」


「発動までのプロセス?」


「そう。ルイスは目視ではなく、”空間把握”で敵を察知して攻撃をしていると思うけど、狙って撃つまでの時間をもっと短縮できないか? あの雷はとてつもなく速い。狙って即撃てれば、敵の移動速度に関係なく攻撃を当てられると思うんだ。」


「う~ん、どうだろう?」


 自身なさげだな。FPS系ゲーム上級者の、ドン引くくらいのエイムの速さをルイスに見せてやりたい。実例を見て、自分にもできると思ってやると、案外上手くいくと思うんだよな。


「実用的なことに頭と時間を使おうぜ。精霊と感覚を共有しているんだろ? どーせ召喚した精霊は今は帰ってくれないんだから、歩きながら狙いつける練習してみたらどうだ?」


 精霊の雷は、発動後に避けるのはかなり難しい。それこそ疾風迅雷ってやつだな。

 俺の言葉を受けて、少し前向きになれた様子のルイスは、精霊と一緒に狙いについて練習を始めた。あーでもない、こーでもないとぶつぶつ呟きながら歩いている。あのサルの動きは”行動観察”でしっかり記憶できたので、また”幻影”を使ったシミュレーション訓練を行うとしよう。


 2時間程歩くと、マリユスさんから休憩の申し出があった。適当な木陰を見つけて腰を下ろすと、マリユスさんは少し睡眠をとると言って、すぐに寝てしまった。あれか? 無呼吸症候群で睡眠が浅いとかで、日中寝ないとダメなのだろうか?


「寝ちゃったね。」


「そうだな。俺たちも休むとしよう。」


 約1時間後。そろそろ出発しようかという頃合に、マリユスさんは起きてきた。……うん? 何か、身体がひと回り小さくなってないか? 気のせいかな? ルイスがこそこそと話しかけてくる。


「ねぇ、シンク。マリユスさん、小さくなってないかな?」


「お前もそう思うか?」


 休憩前まではぱっつんぱっつんだった外套に、多少たるみがあるように見える。しかし、そこまでがっつり観察していたわけでもないので、確証が得られないな。まぁ、多少小さくなっていたからといって、何がどうなるわけじゃないんだが……。


 マリユスさんは、寝ている以外の時間は全て、食べながら行動している。既に身体の体積以上は食べている気がする。小1時間歩いて、あることに気が付いた。外套にたるみがない。あれだけ食べているのだから、太ったのか? ……いや、お腹が膨らむことはあっても、腕や肩にそんなにすぐ脂肪はつかないよな。何だろう? さてはマリユスさんは妖怪の類か? この剣と魔法の不思議世界で、こんな謎に直面するとは思わなかった。……旅に出てみるものだな。


 マリユスさんも、俺達がちらちら見ていることには気付いているだろう。謎めいてはいるが、穏やかそうで親切な人だ。説明してくれないということは、何か言いたくない事情があるのかもしれない。ならば、こちらも恩人に対して余計な詮索はするまい。ルイスにも、気になるのは仕方ないとしても、詮索はしないようにそれとなく注意した。


 休憩の度にひと回り小さくなり、食べ始めると大きくなる、を繰り返すマリウスさんと共に、野営地に到着した。周辺は広く拓かれていて、視界が通り、魔素も散りやすくなっている。こういった野営地が街道には点在しているのだが、これらは旅を安全に行えるよう、国や冒険者ギルドが協力して維持管理しているものだ。

 既に何組かの先客が野営の準備をしている。俺たちも空いているスペースにテントを張り、準備を始めた。俺のテントはかなり広いので、マリユスさんにも一緒に使わないかと提案してみた。テントを見たマリユスさんは驚き、しばらく迷っていたが、一緒に使うことに同意してくれた。

 見張りの順番等についてマリユスさんから確認があったが、俺には”野営”と”気配察知”のスキルがあるので、何か異常を感知したらすぐに起きられることと、テントに備わっている防衛機能について説明し、全員で休むことにした。そして、翌朝……。


 目を擦りながら個室のドアを開けると、テントのリビングにて、スラっとした長身の男性が食事をしていた。男性は俺に気が付くと食事を止め、


「シンク殿、おはよう。」


 と挨拶をしてきた。えっと……あんた、誰?


お読みくださりありがとうございます。

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