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転生時に女神に呪われたが、どう考えてもそれがチートスキルな件について  作者: さっちゃー
第二章 旅立ち~冒険者へ
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2-15

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

500pt達成です! ブクマ評価ありがとうございます!

今回、文字数で言うと普段の3倍くらいあります。キリの良いところまで書いていたらこうなりました。すいません。

 昼頃にやっと二日酔いが抜けてきた俺は、村長から報酬を受け取り、それを使って村の中で買物をした。必要な物は、敢えて()()で購入させてもらった。9年前から財政的に大変な状況で、そんな中でも孤児達をキチンと育てあげたこの村の人々に、俺なりに敬意を表したいと思ったのだ。

 自警団の連中には再度、スキル鑑定紙を使ってもらった。これまでの訓練と、昨日の防衛戦のおかげだろう。レベルもスキルもかなり上昇していて、2週間前とは見違えるようだ。今後の鍛錬方針は伝えたが、この村はもう、自衛戦力だけで大丈夫だろう。

 それを済ませると、俺はもう1度マンティコアがいた辺りまで赴き、取り残したドロップアイテムを回収した。昨日は時間が無くて、マンティコアの分しか確保していなかったのだ。拾い終えるとかなりの量になったから、それなりの金額で売れるだろう。”激運”がいい仕事をしていて、レアアイテムも結構ある。

 因みに、マンティコアからのドロップも、レアな装備品の指輪であった。試しに装備してみたが、どうやら魔素的な身体強化要素が一切働かなくなるようだ。スキルも魔術も同様、全く使うことができない。身体から力が抜けるような感覚もある。一体、何の役に立つんだろうな……まあ、この手のアイテムは使い方ひとつで化けることがある。RPGなんかのバグ技でも、こういった、他での用途が考えられない物を活用する場合が多い。指輪なんてかさばるものでもないし、ひとまず手元に置いておこう。


 翌日。村長たちに見送られて村を後にした俺達は、開拓の町ペッレを目指して歩き出した。荷物はドロップ品がかなりの量になったため、予備で持っていたかーちゃんのマジックバッグも活用し、分担した。レオに貰ったマジックバッグは俺が、かーちゃんのお古はルイスが背負っている。

 自警団と一緒に訓練していたルイスは、ある程度の索敵、戦闘、採取はこなせるようになっているが、冒険の基礎を知らない。なので道中の会話は、冒険者としての基本的な動き方や、基礎知識をルイスに教えることに終始した。

 そうして3日ほど移動し、特にこれといった問題もなく、ペッレに到着することができた。時刻は10時頃。ここまでモンスターにほとんど遭遇しなかったため、予定よりもだいぶ早く着いた。


「大きな町だね。僕、町まで来るのは初めてだよ。」


 現在、俺達は町に入るための審査の列に並んでいる。並んでいるのは10人程だろうか? 冒険者っぽい人もいれば、近隣の村から買い出しに来ているような人もいる。列の先には石造りの、鉄の格子が落ちるタイプの門があり、門の横には城壁が長く続いている。高さは5メートル程で、壁の表面には間隔を置いて、魔方陣が描かれている。魔術障壁や、モンスター避けだろうな。いやぁ、こういう風景を見ると、いかにもファンタジーというか中世、って感じがしてテンションが上がるな。


「俺も初めてだなぁ。」


 こういう景色は前世も通して初めてだ。いつかドイツでも旅行して古城巡りなんてしてみたいものだと思ってはいたが、1人で行ってもなぁ、と結局計画しなかったんだよな。

 2人でボケっと壁を眺めているうちに順番が来た。衛兵による審査では、村長から預かっている身分証明書の提示が必要だ。紛失してしまった場合は身元保証金を払う必要があるが、モンスターの襲撃などで紛失した場合は、また別口で審査があるようだ。

 ルイスが緊張のあまり、酷くどもった応答をして何度か聞き返された以外は、特に問題なく審査は終わった。晴れて通行許可が下り、ルイスの緊張っぷりに苦笑いする衛兵が、道をあけてくれる。


 門から続く大通りは、馬車が擦れ違えるほどに広く、まっすぐに作られている。先は広場になっているようだ。通りの両脇には、1階が商店、2階から上が住居、って感じの建物がずらりと並んでいる。辺りを見回して感嘆の声を上げていたルイスが、ふと俺を見上げた。


「この後、どうするの?」


「とりあえず、冒険者ギルドの出張所を探そう。そこでモンスター素材を売却して、路銀にしよう。」


「出張所?」


「出張所は冒険者が依頼を受けたり、素材の買取をする場所だな。他には、一般客から依頼を受けたりもする。」


「冒険者じゃなくても買い取ってくれるの?」


「買取だけなら問題ない筈だ。まぁ冒険者として登録していた方が、いろいろ特典があるみたいだけどな。とりあえず広場に出よう。案内板のひとつもあるだろうし、無ければそこらを歩いている人に聞けば良いしな。」


 おのぼりさん宜しく、周囲を眺めながら歩く。商店はテイクアウトの飲食店や宿屋、日用品を扱う店が多いように見える。ラグさんもフードから顔だけ出して、あちこち見回しているようだ。


 到着した広場の中央には噴水があり、その脇に案内板を見つけた。この広場が町の中心に位置しており、主要な道はこの広場から東西南北にまっすぐ伸びている。俺達が通ってきたのは北門から南下する通りだったようだ。さて、冒険者ギルドの出張所は……広場に面した北側にあるらしい。振り向くと、すぐにそれらしい看板を掲げた建物が見えた。

 看板には、盾と天秤が描かれている。盾はともかく、天秤? と思うかもしれないが、これは冒険者ギルドの前身が、もともと商業ギルドの護衛組織だったことに由来している。天秤が商業ギルド、盾が冒険者を表している、ってわけだ。そのため、親組織は商業ギルドになる。


 今でこそ、冒険者ギルドは国家を超えた武力組織として各国に認められているが、ここに至るまでは商業ギルドの計算と立ち回りがある。最初、商隊を守るため、との名目で護衛の専属部門を作る許可を得ると、ゆっくりと規模を拡大、気がつくと護衛を騎士で賄えなくなる規模まで物流量となっていた。それだけでは当然、国に目をつけられそうなものだが、拡大と同時に、為政者が無視できない税収を広く納めることで、各領地との強固な繋がりを築いてきた。今や、排除などとてもできないレベルの物流を担う、社会インフラとして完成されている、というわけだ。

 商業ギルドの力は現在、ダンジョン都市ギョンダーにて、独自の政治機構を持った都市を保有するまでに及んでいる。


 さて、話を戻そう。冒険者ギルドといえば、ウエスタンドアだ。この出張所もウエスタンドアになっている。押し開けて中に入ればコワモテの先輩冒険者の方々が品定めの視線を送ってきて絡まれる……までがお約束だ。そこで相手を叩きのめして一目置かれる、とかちょっと憧れるな。実際にそうなったら、周囲の評価がどうなるか不明なので、叩きのめすまではできないだろうけどさ。

 そんなことを考えながら、中に入る。期待とは裏腹に、建物の中は閑散としていた。コワモテの視線が集まることもなく……と思ったら、入口近くのテーブル席に座った2人組と目が合った。体格は良いが、人相が悪い。着崩した服装の、いかにもなチンピラだ。しかし、すぐに視線を外された。あっさりしたものだ。

 ドアから先の空間は広く開けており、奥にカウンターがある。手前の壁際はテーブルが幾つか並び、先程のチンピラもその一角に座っている。壁には大きな掲示板があり、依頼書と思われる紙がところ狭しと貼り付けられている。

 ここに来た目的は、ドロップ品を買い取ってもらうためだ。カウンターまで進み、呼びかける。


「何か御用ですか?」


 カウンター内にいた、20代前半くらいの綺麗なお姉さんが対応してくれた。


「モンスターの素材を買い取ってもらいたいのですが。」


「では、こちらで承ります。品物は今お持ちですか?」


「はい。結構な量があるのですが、ここに出しても大丈夫ですか?」


「量、ですか?」


 俺達は確かにパッと見、大荷物を持っているようには見えない。大容量のマジックバッグなんぞ高級品だものな。いかにも駆け出し風の若い2人が、そんな物を持っているとは思わないだろう。論より証拠だな、じゃんじゃん出してしまおう。どんどんとカウンターの上に積み上げていく。荷物量が明らかにバッグの体積を越えた辺りから、お姉さんも気がついたようだ。


「マジックバッグ!? え、えっと、まだまだありますか?」


 驚きの声を漏らしている。


「これで半分くらいですかね?」


 錬金や調合の素材として使えないものは、全てここで売却するつもりだ。


「わ、分かりました。少々お待ちください。」


 お姉さんは積まれたアイテムを、カウンターの向こう側に下ろし始めた。


「ど、どうぞ。」


 開いたスペースに、またもどんどん積んで行く。


「これで最後です。」


「は、はい。しばらくお待ちください。」


 お姉さんは一旦奥の扉に引っ込むと、何人か連れてきた。積み上げたものの査定をするようだ。しばらく、という程でもないが何分か待った後、査定が完了した。


「レア素材が非常に多いですね。こちらの金額になります。」


 紙に金額が書かれ、それにサインする形のようだ。ラグさんがフードからひょいっと顔を覗かせる。


(妥当な金額ね。)


 と伝えてきた。


(ラグさんありがとう。)


 と心の中で伝え、サインをし、お金を受け取った。ルイスはその金額の多さに目を丸くしている。


「ありがとうございました!」


 と、冒険者ギルドの職員から見送られ、ウエスタンドアを押し開け外に出る。しかし、数歩も進まないうちに、後ろから声を掛けられた。


「ちょっといいかい? 君たち。」


 声を掛けてきたのは、先程、入口付近にいたチンピラだ。


「ここを使うなら、みかじめ料を払う必要があるんだよ。」


「5割だ。さっさと出しな。」


 チンピラはそう言って凄んでくる。


「し、シンク……。」


 怯えたルイスが、俺の袖をぎゅっと掴んでくる。


「みかじめ料? えっと、あなた方は商業ギルドの方ですか?」


 ルイスの背中をとんとんと叩きながら、チンピラに対応する。敢えて声を張り上げ、周囲に今起きていることを説明するように話す。どう見てもこれはカツアゲだろう。


「おう、そうだよ。さっさと払いな。」


「商業ギルドの方でしたら、先ほどの支払いの際に差し引いてもらうのが筋かと思います。今さらこのような取立てをされましても……。」


「何だ、刃向かうのか? 2度と冒険者ギルドが使えなくなってもいいのか?」


「使えなくなる? そのような事が、あり得るのですか?」


「そうだよ、さっさと払いな。」


 睨みを効かせてくるチンピラ2人。そして怯えるルイス。ルイスが分かりやすく怯えているものだから、イケると思って調子に乗っているんだろうな。こいつらは全然強くない。そもそも立ち方からしてなってない。凄みを出したいのか、背の低い俺たちの上に被さるような重心になっているが、それじゃ咄嗟の回避なんてできるわけがない。かく言う俺は自然体だ。両足に均等に重心を分け、脚の爪先に重心を集めている。爪先から一気にかかとへ重心を移すことで、キックショックが発生し、初歩から最速で動けるのだ。重心の移動は筋肉で行っているから、外見的にはただ自然体で立っているだけに見える、ってわけだ。

 俺はさらに声を張り上げて、チンピラ2人に反論する。


「身分証の提示をお願いします! みかじめ料が必要との旨の書かれた証明書もです!」


「いいから出せって言ってんだろうが!」


 揉めていると、出張所から先ほどの受付の美人さんが出てきた。


「あなた達! またそうやって、ありもしないみかじめ料を徴収しようとしてますね! 次やったら衛兵に突き出すと言った筈ですよ!」


「チッ! 行くぞ!」


 そう吐き捨てて、2人は走り去っていった。


「コラ! 待ちなさい!」


 大して強そうに見えなかったチンピラ2人だったが、逃げ足だけは早かった。アッと言う間に人ごみに紛れ、姿をくらました。

 お姉さんは俺たちの方を向き、申し訳なさそうに話し始めた。


「商業ギルド、冒険者ギルドでみかじめ料が発生するようなことは絶対にありません。先に注意を促すべきでした。申し訳ありません。」


 そう言って頭を下げた。


「いえいえ、先程の輩はカツアゲだろうとと思ってましたので、大丈夫です。お姉さんに頭下げてもらうような事じゃありませんよ。」


「うんうん。」


 俺が言い、ルイスがぶんぶんと頷く。


「あの者たちから何か被害を受けるようなことがありましたら、当出張所までご連絡ください。すぐに対処いたしますので。」


「分かりました。そうだ、せっかくなので、お勧めの宿と居酒屋がありましたら教えてくれませんか。」


「それでしたら――」


 お姉さんから宿と居酒屋の情報をゲットした俺たちは礼を言い、その場を後にした。

 その夜。居酒屋にて入店に際し、子供でないことを証明するためわざわざ身分証明書を見せるハメになったが、何とかお酒を提供してもらっている。


「昼間は怖かったねぇ。」


 とルイス。


「怖かった? 何が?」


「ほ、ほら! 冒険者ギルド出た後に、すぐ絡まれたでしょ?」


「あ~、あれは怖くないだろう? モンスターの方がよっぽど危険じゃないか。」


「危険度で言えばそうなんだけどさ。やっぱり、睨まれると怖いよ……。」


 これはルイスにも対人訓練をしたほうがよさそうだな。睨まれて固まっているようでは、盗賊なんぞに襲われた時に対処できないだろう。


「ルイス。そんなんじゃ、いざって時に動けないぞ。例えば、だ。好きな女の子とデート中に絡まれたら、どうするんだ?」


「え? ど、どうしよう……?」


「いいか、ルイス。そういう場合になったら、女の子は死んでも守れ。いいな、これは絶対だ。」


「そ、そこまでなの?」


「あぁ、そうだ。絡んでくる連中なんて、ろくな奴じゃない。そんな奴が女の子に何するかなんて、言うまでもないだろう? そんな結果にならないためにもな。」


「……うん。」


 ルイスは神妙な顔で頷いた。


「それとな。男ってのは女を守るものなんだよ。何のために、男が女より力が強いのか、って話だ。力で相手を服従させるためじゃない。”守るため”なんだ。」


 ここに関しては人によっては異論が多数あることだろう。しかし、俺の信念としてはこれなのだ。……うーん、飲みの席で後輩ルイスに自論を語って聞かせる。良いねぇ。


「”守るため”?」


「そうだ。男女で力の強弱があるのは、何にせよ意味がある。種族の繁栄のためだ。言うなれば役割だ。その方が、人間という種が繁栄しやすいってことだな。じゃぁ種族全体が繁栄するために、力で物言わせて相手を服従させればもっと繁栄できるのか、っていうと違うだろ? 協力関係をより多く築くことが重要だ。つまり、力の正しい使い方は、守ることにあるんだよ。」


「なるほど……。」


「さっきの、デートの例えでの守り方だけどな、優先順位を決めて行動するといい。1に女の子の安全。2に自分の安全。3が法律の遵守だ。」


「え、法律を守るのは3番目なの?」


「法律守って死んじまったら意味がないだろう? 相手殺してでも、自分は生き残るんだよ。守るものが無い奴は無鉄砲なことをする。奴らは法律なんて守りゃしない。こっちが完全に実力で上回っていて、押さえ込めるならいいんだが、そうじゃないなら先に手を打つしかないだろう? 殺したくないのなら、それなりの術を身に付けないとな。ルイスは術師だから”暗黒術”がお勧めかな。」


 一拍、間を空けて続けた。


「守りたい時に、守る実力が無いってのは、辛いぞ。」


 俺の一言で、ルイスはハッとしたような顔をした。


「ご、ごめん……妹さんの事を、思い出しちゃったよね?」


 妹って、イーナのこと? ……あぁ! 誤解したままだったか。この後、ルイスの誤解を解くのに結構苦労した。

 十分お酒と食事を堪能し、宿へ帰る。


「お酒って美味しいんだねぇ。ふふふ。」


 ルイスはお酒のため朱色に染まった顔で瞳を潤ませ、トロンっとした表情を浮かべている。本当に、無駄に色気があるなぁ。歩き方も何やらふわふわしていて、ちょっと危なっかしい。

 繁華街の喧騒の中、ふと、言い争うような声が聞こえた気がした。俺は”鋭敏聴覚”のスキルを用い、正確にその声を拾おうとする。どうも、女性と男性2名が言い争っているようだ。しかし……何だか、女性の声に聞き覚えがあるような気がする。


「ルイス、ちょっとこっち行くぞ。」


 俺は宿への道から外れ、声のするほうへ向かった。


「昼間はよくも邪魔してくれたな!」


「放しなさい! こんなことして、只で済むと思っているのですか!? 」


「いいからこっち来い!」


 すぐに、言い争っている人影を発見した。どれも見知った顔だ。女性は出張所の受付の美人さんで、男性2人は例のチンピラだ。お姉さんはチンピラ達に腕を掴まれている。ルイスもどうやら状況を理解したようだ。小声で慌てふためいている。


「どどど、どうしよう! シンク!」


「な。こういう場合、どうするかキチンと考えてないと、咄嗟に動けないだろ?」


「そんな冷静に解説している場合じゃないでしょ!」


 ルイスに解説しながらも俺は”詠唱変換-印術”を用い、”暗黒術”の詠唱を行っている。口でも詠唱しながらチンピラ2人に近づいていく。術の射程範囲に入ったところで、発動させた。


「”スリープ”、”スリープ”」


 ”魔力圧縮”でかなり効果を上げたし、不意打ちだから抵抗は難しい筈だ。


「う」「ふぁ」


 変な呻き声を上げ、2人とも崩れ落ちる。


「え?」


 突然、腕を掴んでいた2人がその場に崩れ落ちたことで、お姉さんもびっくりしているようだ。


「大丈夫ですか?」


「あ、あなた達は……。」


 俺は手早くアイテムポーチからロープを取り出し、”捕縛”スキルを用いてきっちりと拘束する。お姉さんが言うには、『残業で遅くなってしまったが、慣れた道だから大丈夫だろう』と1人で帰る途中に、このチンピラ達に絡まれたらしい。どうも昼間の仕返しで張られていたようだ。……こんな時間まで待つ忍耐力があるなら、真っ当に働けば良い物を……無駄な方向にばかり努力できる連中だな。お姉さんには手間を取らせて悪いが、今後のために一緒に自治組織の詰め所までついてきてもらい、”演技”スキルを用いて大げさに、しかし嘘は含めずたっぷりと罪過を吹き込みながら、チンピラ達を突き出してきた。素行の悪さで、この界隈ではそこそこ有名だったらしいチンピラ2人に弁明の機会は与えられず、こちらの証言だけでお縄となったのであった。お姉さん曰く、『冒険者ギルドとしても罰則を与えることになる』とのこと。

 お姉さんを家まで送り届け、ようやく宿にたどり着いた頃には、日付を跨いでいた。ベッドに寝転がりながら、深く息を吐く。


「はぁ、やっぱり面倒だな。」


「何が?」


「チンピラ2人をしばくのにかかった労力が、だよ。『ザマァ見ろ!』って気が晴れるわけでもないしな。勿論、お姉さんを救えたのは本当に良かったけどな。どう転んだって時間が無駄にかかるから、女性が襲われているんでもない限り、ああいう輩には関わらないのがベストだな!」


 野郎は自分で何とかしてください。


「あー、”暗黒術”のレベル上げて、”即死(デス)”を覚えたい……。」


 俺のぼそっとした呟きに、ルイスが「え!?」って顔してこっちを見ていた。



お読みくださりありがとうございます。

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