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ゲームの世界

 「おお!『桃鉄』に『ロマサガ』、『FF』、『テイルズ』じゃないか」


 信平はソフトを漁りながら「これは戦略ゲーム。これはBGMや技術が凄い」などブツブツ言いながらソフトをスーパーファミコンの本体に入れて夢中で遊び始める。勇気と流亜はそんな彼を見て溜息をつきながら、よくこんなチカチカした世界で楽しめるもんだと思った。しかし、2人も全くゲームをしてこなかったわけではない。懐かしのソフトをいくつか手にとりゲームをし始めた。


 「それ『パネポン』じゃね。対戦しようぜ」

 「いいけど、私パズル系は強いわよ」


 勇気と流亜はコントローラーを渡し合いながら、1人でゲームをしている信平に「一緒にやらないか」と声をかける。彼は振り返ると「僕1人でじっくりプレイするほうが好きなんだ」と言って、再びゲーム画面に向かって黙々と遊びだした。その姿に2人は「あの時みたいだ」と苦笑いした。


 「昔なら喧嘩してたわよね」

 「俺らが一緒に遊んでるときも1人でゲームしてたからな、あいつ」

 「そういえば、どうやって仲直りしたっけ」

 「覚えてねぇなぁ」


 2人がゲームをしながら考えていると、2度目の字幕が現れた。


 【ヒント。上に沢山のフィギュアがあるよ】


 信平はゲームに夢中になっていて気付いていないようだ。2人が上空を見上げると、信平のテレビの真上に、赤い帽子を被った配管工のキャラクターのフィギュアがふよふよ浮いていた。それを見て勇気は「あれ落としてやりてぇ……」と呟いた。真下にある信平のテレビを壊してやろうと意地悪そうな笑みを浮かべて。流亜は思い出したように「そういえばだけど、あの時もテレビを壊してゲームを出来なくさせたわ。その後どうなったかは覚えてないけど」と言う「じゃあ、試してやるか」そう言うと勇気は、適当にソフトを掴んでフィギュアに向けて投げつけた。小さな頃から野球をやっていた彼にとっては、大きなフィギュアにソフトを命中させるのは難しくなかった。ガツンとぶつかったソフトは一部破損してフィギュアとともに落ちてきた。そして真下にあった信平のテレビは壊れて画面が砂嵐になった。


 「ああああああ!」


 突然大声をあげた信平の姿に驚きつつも、2人は彼のもとへ近づき、この世界のゲームを全部していたらこの世界からずっと出られないということを伝えた。まるで昔、ゲームばかりしていた信平を心配するような口調で。すると信平は立ち上がって「そうだね」と言って2人に謝った。そして目に付いたのは、床に落ちている勇気の投げて欠けた1つのソフト。どこか見覚えがある。


 ――『天外魔境ZERO』――


 小学生の頃に3人でよく遊んだことのあるゲームだ。このゲームは些細なことでセーブデータが消えてしまう。ダンジョンが攻略できなくてイライラした勇気が、よくコントローラーを引っ張っては画面を真っ黒にさせたものだ。じっくりやり込む信平は宝箱のコンプリートや卵の育成に熱心になっていた。パズルやミニゲームが好きな流亜は「ニョロゲー」や「赤丸撃ちゲーム」などを遊んでいた。今となってはもう電池がなくて動かないものが殆どだろう。全員が好きなキャラクターや技などを話し合っていると、また字幕が現れた。


 【それでいいみたいだね。じゃあファミコンに挿してみて】


 言われたとおりにソフトを挿し込むと、空中にあるフィギュアは真っ赤な提灯となり紐で結ばれ、ブラウン管テレビは屋台になり規則正しく並ぶ。3人が上を見上げると、天井は三日月が居座る夜空に塗り替えられていき、ゲームのピコピコ音は太鼓や笛の音色に変わった。そして、ソフトたちは人の姿へと変わり、みなそれぞれの屋台で遊んでいる。中央の大きなスクリーン画面は豪華絢爛な神輿の姿に変形した。そして「わっしょいわっしょい」という掛け声のあとに「次は〔祭りの世界〕だぁ」という威勢のいい声が聞こえた。


 「あれ石は」


 流亜がそう言って足元を見ると、先ほど『天外魔境ZERO』だったソフトが例の石の姿になっていた。信平が残念そうに取り上げて文字を読み上げる。そこには「な」と書かれていた。


 「チーターより。でいな……」

 「わかった!ディナーよ」

 「じゃあ次は『ー』かな」


 3人が賑やかな祭りの世界の中で話し合っていると「よっ、不正解不正解」とまた声が聞こえてきた。おそらくチーターだろう。そして今度は「やぶれない金魚すくい屋をみつけよ!」と言う。


 「いつまで続くんだこれ」

 「ここ無料で遊べるのかしら」

 「人ごみは苦手だなぁ……」


 3人はそれぞれの思いを口にして、祭りで賑わう夜の世界を歩き出した――

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